スポーツのゴールは金メダルですか?

「オリンピックで金メダルを取りたい!」そう思い、一生懸命スポーツをする子どもはたくさんいるでしょう。仲間と一緒に夢を目指す子どもたちに、このような大人はどう映るのでしょうか。

9日、世界反ドーピング機関(WADA)は、ロシアが国ぐるみでドーピングを行っていたとする調査内容を公表しました。事の発端は昨年12月、ドイツのテレビ局によるロシアがドーピングに関わっているという調査報道でした。これを受けてWADAは調査を開始しました。国際陸上競技連盟(IAAF)はロシア陸連を資格停止処分にするよう勧告しており、来年のリオデジャネイロ五輪にロシア選手が出場できない可能性もあります。コーチや医師がドーピングを選手に強要したり、ドーピングした選手の検体をすり替えたりと組織ぐるみの不正です。また、検査機関やIAAF元幹部に金銭を渡していたとの報道もあります。これに対して、ロシア政府は「証拠がないうちは、受け入れることが難しい」と反論しています。

経済が勢いを失っているロシアが今世界に誇れるものは軍事力とスポーツ力です。特にプーチン政権は国威発揚をロシアの地位を示すため、スポーツに力を入れてきました。選手育成に手厚い支援を行い、国際大会で活躍した選手に高額の賞金やマンションを送るなど優遇しています。こうした政策の中、国ぐるみでのドーピング問題が明るみに出るとロシアの負の面を感じてしまいます。どんな手を使ってでも世界で一番になることが素晴らしい。金メダルの多い国が力を持っている。それは違うでしょう。オリンピック憲章にはこう書かれています。「オリンピズムが求めるのは、文化や教育とスポーツを一体にし、努力のうちに見出されるよろこび、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などをもとにした生き方の創造である。」オリンピックだけに関わらず、スポーツ全体に置き換えてみても、勝つことがすべてではありません。もちろん競いあってるのですから、勝つことも大切ですが、ひとつの勝利は努力によって生まれるべきものです。

今回の調査報告を受け、ロシアが国として一連の問題を認めることがないかもしれません。リオデジャネイロ五輪に陸上競技は出場できないとなれば、全種目でボイコットするおそれがあると述べる専門家もいます。私はそうしてうやむやにはしてほしくありません。きちんと認め、アスリートとアスリートを支える人々には、これからをアスリート目指す子どもたちによい手本なる生き方の創造を示してほしいと思います。

 

参考記事

11日付読売新聞朝刊関連面