幕末、戦国、鎌倉…… 歴代大河ドラマは「○○時代」の主人公が多め?

1226日、NHK大河ドラマ「青天を衝け」が最終回を迎えた。主人公は「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。本作は、幕末、明治、大正を駆け抜け、昭和6年に没した渋沢の姿を描いた。

大河ドラマといえば、幕末、戦国時代の印象が強い。現に、今作品の渋沢栄一、前作の明智光秀は両時代の傑物のひとりである。

では、実際はどうだったのだろうか。今作品を含めた歴代60作品をジャンル別に分析した。内訳は、「幕末もの」、「戦国もの」、「江戸もの」、「室町もの」、「南北朝もの」、「鎌倉もの」、「平安もの」、「源平もの」、「琉球もの」、「近代もの(明治、大正、昭和)」の計10ジャンル。

「源平もの」は源氏と平家の興亡を描いた作品、「琉球もの」は琉球が舞台の作品だ。他のジャンルは、時代ごとに活躍した人物を取り上げたものだ。

また、60作品の中には、渋沢栄一のように、幕末、明治時代といった時代を横断した人物を取り上げた作品も多々ある。そのような作品は、私の「独断と偏見」によりジャンル分けをした。

(NHK放送史「大河ドラマ 全リスト」より筆者作成)

その結果、ある時期を対象にした作品が圧倒的に多いことがわかった。その時期とは、やはり、戦国時代であった。ダントツ1位の22作品だ。

群雄割拠の戦国時代は織田信長、武田信玄、伊達政宗など知名度が高く、根強い人気の武将が多い。幅広い層をターゲットにしている大河ドラマの主人公にとって、知名度と人気は重要である。戦国時代の人物には、これらを満たした人物が多いからこそ、「ダントツ1位」の作品数なのだろう。

次に多かったのが、15作品の「幕末もの」だ。戦国時代と負けず劣らず知名度が高く、人気の人物が多いのが理由だろう。

では、なぜ「戦国もの」よりも7作品も少ないのか。あくまで私の推測だが、幕末に活躍した人物の多くは、明治時代に政治家、実業家など社会的に高い地位についた。そのため、「幕末の志士時代」が物語のピークとなり、それ以降は、いささか盛り上がりに欠ける展開となってしまう。

このような倒幕、明治維新で物語としての最高潮を迎えてしまう人物は、ドラマの主人公には少し不向きなのではないだろうか。現に、15作品のうち、7作品は坂本龍馬、大村益次郎、近藤勇など明治維新前後で死亡した人物や徳川慶喜、篤姫のように維新後も生きたが、作中においてその後の人生はほとんど描かれなかった人物が主人公だ。

戦国、幕末もので計37作品。全体の59%と過半数を占めている。両ジャンル以外は、江戸ものが8作品、源平もの、近代ものがともに4作品、鎌倉もの、平安ものが2作品、南北朝もの、室町もの、琉球ものが1作品と軒並み一桁。戦国時代、幕末の人気の高さが窺える。

(歴代大河ドラマ60作品のジャンル別比率、筆者作成)

来年19日からは人気脚本家・三谷幸喜氏の『鎌倉殿の13人』が始まる。三谷氏は『新撰組!』(2004)、『真田丸』(2016)2作品の脚本を手がけてきた。両作は言わずもがな、幕末、戦国を舞台にした作品だ。

しかし、北条義時が主人公の『鎌倉殿の13人』はあらすじなどを読む限り、鎌倉時代が中心の作品だ。鎌倉時代が中心の作品は、『草燃える』(1979)、『北条時宗』(2001)以来の3作目。大河ドラマにとってはマイナーな時代といえる。しかも、主人公は北条義時。知名度もおそらく人気もない主人公だ。歴代大河ドラマの多くは、「戦国時代、もしくは幕末の人気者」が主人公だった。そのことを考えると、次作は異例といえるだろう。どのような大河ドラマになるのか非常に楽しみだ。

参考記事:

朝日新聞デジタル「情熱持って、生き抜く栄一を 大河「青天を衝け」26日最終回

参考資料:

NHK放送史「大河ドラマ 全リスト