「すれ違い」、そんな表現がお似合いでした。恋愛の話ではありません。首脳同士のお話です。思いや志を共有できければ、いくら上辺だけ取り繕っても、いずれ決裂するでしょう。そんな未来が頭を過ぎった今日は、中台首脳の初会談がテーマです。
7日、中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統が シンガポールで1949年の分断以来初となる首脳会談を行いました。両首脳は中国大陸と台湾が共に「中国」に属する「一つの中国」原則を認める「1992年合意」を基礎に、平和を維持し関係発展を目指す立場を確認しました。ただ、双方ともに主権を認めていない状況下で、馬氏は「両岸関係は分断以来、最も平和で安定した段階にある。」と語っていたものの、習氏は「国家分裂のいかなる行動も認めない」と強調しており、両国の関係については明らかな「すれ違い」が見受けられます。独立という台湾の目的や地域の緊張緩和などの関係改善にどこまで好影響を与えることができるかは依然として不透明です。
1949年の国共内戦の末、勝利した毛沢東率いる共産党が現在の中華人民共和国を成立させ、敗れた蒋介石率いる国民党政権は台湾で中華民国を再建しました。それ以降中台の関係は分断されていましたが、92年に「一つの中国」の原則で合意したとされる以降、台湾海峡での中国のミサイル演習などで発生した緊張関係を乗り越え、05年に国共のトップが会談して以降、現在の馬政権では経済的な協力関係をもとに強い結びつきが生まれつつあります。そのような背景で行われた今回の会談で馬氏は平和的な関係を維持しつつ、現在の独立した台湾の立場を保ち、交流を促進することを主張したものの、周氏は平和的関係を維持しながら、あくまで台湾独立反対の立場を譲りません。台湾という土地に対して双方の政権の認識の差がどうしても埋まっていない中では、繰り返しになりますが、両首脳の主張は「すれ違い」と言わざるを得ません。
両国が協力するという意味で「一つの中国」を理想とするならば、様々な分野での意思統一が必須です。経済に限らず、双方の将来的な関係性についても同じ認識を持たなければなりません。ですが、言ってしまえば「喧嘩別れ」をした過去を持ち、その時の清算は未だ道半ば。とりわけ最も清算すべきは台湾という土地の将来への認識です。独立という立場を取るのか、中国の一地域という立場を取るのか、その認識の共有から話を進めるべきではないでしょうか。「すれ違い」乗り越えたその先に、次世代の国共合作が待っています。それこそ「一つの中国」のゴールであるような気がしてなりません。
参考記事:各紙中台首脳会談関連面