「裏アカ」特定はあり?なし?

主に就職活動中の大学生が匿名で発信する「就活裏アカ」。つい最近まで就活生だった私も、自分から発信こそはしなかったものの、業界分析や最新の就活情報を得るために時折チェックしていた。

匿名ゆえに、面接がうまくいかなかった時の愚痴や就活のストレスを吐いているツイートも見かけた。共感を呼ぶツイートが多い一方で、「炎上」しているものもあった。雑多なつぶやきで溢れているため、自分の就活にとって本当に必要な情報だけを手に入れる難しさを感じながら利用していた。

多くの企業がインターンシップからの早期選考など、実質解禁日より前から採用活動を進める中で、就活は情報戦とも言える。当事者にとって、他の現役就活仲間がツイートする内容は大切な情報源でもある。またコロナ禍で人に会う機会が減っている。特に21、22卒の就活生の中には、ツイッター上で知り合った志望業界や企業が同じ学生たちで面接やグループディスカッションの練習をしていることもあったようだ。うまく利用すればコロナ禍の就活に役立てられる。ツイッターをはじめとするこうしたSNSは、就活生にとって一つのプラットフォームでもあると感じた。

一方の企業にとっても、重宝なツールかもしれない。提出されるエントリーシートや面接は就活生が自分をアピールするものだから、採用する側はそれだけでは分からないことも多い。そのため、就活生の本音が伺える「裏アカ」は有益な情報源になるのだ。

だが、SNSの投稿だけで得られる情報は限られる。仮に企業が裏アカを突き止めて得られた情報を採用活動に使うとしても参考程度にとどめるべきであり、それだけで採否を判断するべきではない。公正な採用選考を行うために、職業安定法は思想信条や社会運動など本人の適性や能力に関係のない事項で採用の可否を判断することを禁じている。こうした裏アカの特定が就職差別に繋がることは決してあってはならない。企業側は選考要素に含める内容と含めない情報の線引きをより明確にしていく必要がある。

発信内容を誰もが閲覧できる公開設定にしているならば、就活生本人も当然その内容に注意して発信するべきなのは言うまでもない。裏アカ特定が就活生の萎縮を招いてはいけないが、就活生側も企業に見られるリスクを理解した上で正しく利用していくべきだ。

参考記事:

27日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面 「(探られた裏アカ 就活の深層:上)就活生の「裏アカ」まで調査」

27日付 朝日新聞朝刊(東京14版)25面 「(探られた裏アカ 就活の深層:上)SNS調べて「選考」、いいの?」