アイスクリーム業界が変革期を迎えています。大人の食べ物へと大きく変化しているというのです。筆者がそのことを知るきっかけは、今月10日の日本経済新聞の記事でした。バニラ豆など原料の輸入価格の高騰に伴い、2020年の販売価格は10年前に比べて約2割上昇して過去最高に。メーカーが味や素材にこだわった高い単価の商品を開発し、それが購買力のある年齢層に受け入れられていることも相まって、アイスのプレミアム化が進んでいるそうです。
振り返ってみるとアイスクリームの歴史は古代ギリシア・ローマ時代まで遡ります。アイスクリームの歴史を追ったローラ・ワイスの著書『アイスクリームの歴史物語』によると、クリームと砂糖と卵を攪拌して味付けするというおなじみのレシピではなく、乳を使わない冷たい飲み物からその歴史は始まったそうです。当時冷蔵庫などはなく、冷たい飲み物を用意するには、まずは氷の産地を確保して氷を数か月保存しておかなくてはなりませんでした。
18世紀においても砂糖をはじめとする原材料はきわめて高価で、特権階級や金持ちだけが口にできるぜいたく品でした。それが庶民にも手の届くお菓子になったのは、1851年のこと。アメリカ・ボルチモアの牛乳商ヤコブ・フッセルが夏季に余った生クリームの処分に困り、加工してアイスクリームを作ることにしたことがきっかけでした。大量生産の時代の到来です。
20世紀初頭には戦場にも登場します。第二次世界大戦中、アメリカ軍の参謀たちは故郷を離れて闘う兵士たちの士気を高揚させるためにアイスクリームを利用します。兵士の精神的支えとして非常に重要視され、南太平洋には軍にアイスクリームを支給するための小規模な工場が建設されたそうです。日本も例外ではありません。アイスクリーム協会によると、国内の酪農生産物のほとんどは軍用物資として徴用され、民需品の製造は休止せざるを得ない状況にあったようです。
アイスクリームは、ぜいたく品から庶民のものへ、時には食べられなくなる時代を経て今に至ります。冒頭で紹介した日経の記事は、モナカアイス「チョコモナカジャンボ」を販売する森永製菓が約86億円を投じて高崎第3工場(群馬県高崎市)に新たな製造ラインを稼働させたと報じています。付加価値の高さが消費者に受け入れられるようになったことで、アイスは各社の重点商品になっているとも書かれていました。
今回のプレミアム化が日本のアイスクリーム業界にどういった影響を与えるのか。毎晩風呂上りに食べることが日課という、アイスクリームには目のない筆者は注目したいと思います。
最後に筆者オススメのアイスを紹介
オハヨー乳業 のBRULEEは濃厚でなめらかなミルクが特徴
レディーボーデンのクッキークランチチョコレートバーはとにかくチョコが食べたい人に薦めたい
参考記事:
9月24日朝日新聞デジタル版「巨峰か黒ごまか、それともイチゴか 「ジェラート総選挙」も大詰め」
9月10日日本経済新聞デジタル版「アイス「ちょい高」ヒット 販売単価、10年で2割上昇」
参考資料:
ローラ・ワイス『アイスクリームの歴史物語』、2012,原書房