世相を映す情報 電車内から消える日が来るか

電車の中で新聞や雑誌を読む人も今ではめっきり少なくなりました。スマートフォンでニュースを取り入れることができる今日、週刊誌の中吊り広告が廃止されるのは避けられないことだったのかもしれません。とはいえ、電車内の風景を大きく変えるといっても過言ではありません。

本日の読売新聞の朝刊では、「週刊文春」は8月26日発売号で、「週刊新潮」は9月末で終了となることが報じられています。当然ながら、その理由はスマートフォンの普及。また、中吊り広告と紙面の締切日のズレからスクープを掲載できないという事情も要因の一つです。

「週刊文春」8月26日号 読売新聞オンラインから引用

過去には電車内で広告を見て、興味を持った人が駅の売店ですぐに雑誌を買うという購買モデルがあったそうです。2018年8月29日の日経新聞デジタルでは、「キヨスク」などへの雑誌の卸売りについて、販売がピーク時の10分の1となり採算が悪化していることを明らかにしています。今後も販売低迷が続けば店頭から雑誌が消える可能性もあるそうです。確かに最寄駅の売店で、雑誌や新聞などを買う姿を私は目にしたことがありません。それどころか今年になって閉店してしまいました。

紙からデジタルへの移行が、広告の世界でも加速してきたことは身を持って感じていました。それでも今回の廃止は、一つの文化が終わったと思わざるを得ない出来事です。

一方で廃止に肯定的な意見を示す人もいます。Yahoo!サイトのコメント欄に、心が痛くなるような見出し、いやらしい見出しを見たくないという声があるのも事実です。阪急電鉄では以前から「鉄道という公共の場にふさわしくない内容が含まれることがある」という理由で、週刊誌の車内広告を一切認めていないといいます。

どんな意見も捉え方も間違いではないでしょう。私自身、週刊誌を自ら買って読んだ経験はありません。しかし、読者でないからこそ、新聞やテレビにとどまらない情報を意識せずとも吸収できる場が電車でした。権力に左右されない独自ルートを歩む週刊誌だからこそ、発することのできる情報がそこにはありました。

今や電車の中で無意識に入るニュースといえばデジタルサイネージの一択。たった10年でここまで変わったのだから、2030年代ではさらなる光景が待っているかもしれません。

JR京浜東北線の車内 商品広告が占めている (本日筆者撮影)

現在、「週刊新潮」の中吊り広告は東京メトロのみの展開となっています。

 

参考記事:

15日付 読売新聞朝刊 (埼玉12版)23面「電子版に宣伝費投入へ」

8月17日付 読売新聞オンライン「週刊文春と週刊新潮、中づり広告を取りやめへ…締め切りの関係で制約」https://search.yahoo.co.jp/amp/s/www.yomiuri.co.jp/culture/20210817-OYT1T50208/amp/%3Fusqp%3Dmq331AQIKAGwASCAAgM%253D

2018年 8月29日付 日経電子版 「キヨスク雑誌消費の効き 売上高9割限で卸が撤退」

参考資料:

東洋経済オンライン

『電車から「週刊誌広告」を排除した阪急の美意識』https://toyokeizai.net/articles/amp/374725?page=2

ABEMA TIMES

『背景にスクープとデジタル化? 「週刊文春」「週刊新潮」の中吊り広告終了へ』https://news.yahoo.co.jp/articles/8c58dc193a6b7c11e85f7ae73f35b2dbc578db63