五輪施設、マイナー競技を広げるための利用を!

東京2020が幕を閉じ、大きな役目を果たした競技場に今度は厳しい目が向けられるようになった。都が大会のために新設した6つの施設のうち5つで、年間の収支が赤字になる見込みだからだ。

大井ふ頭中央海浜公園(品川区、大田区)内に造られた大井ホッケー競技場も「負の遺産になるのでは」と危ぶまれている施設の1つ。数少ない公共のホッケー競技場だが、年間で9200万円の赤字が見込まれている。

試合前大井ホッケー競技場で練習をする部員たち(2019年筆者撮影)

テレビ放送での見栄えをよくする青いフィールド。国際基準を満たす短い人工芝。ボールとの摩擦を減らすための散水設備。芝に砂をまくこともあるが、水でないと国際大会は認められないのだ。ホッケー部に所属する筆者も学生大会の試合会場として何度か利用したことがある。コロナ対策のため、これまで学生リーグの会場となっていた大学施設が使えなくなった昨年も利用できたのだ。芝生での練習が制限されていた学生にとって、貴重な時間だった。

今後はホッケーの国内、国際大会を誘致することで、競技自体を普及させる狙いがある。またサッカー、ラクロスなどその他競技もできる、多目的グラウンドとして活用される。

コロナの出口が見えない以上、今後の利用についても確たる目途は立たないだろう。懸念しているのは、果たしてこの施設が、どれほどホッケーの普及に活かせるのかということだ。1964年の東京大会で使われた駒沢オリンピック公園のホッケー場は、現在球技場などとしてホッケー以外の競技に使われることが多い。また2014年から2年かけた改修工事の結果、砂をまく人工芝に張り替えられてしまい国際大会が開けなくなった。

日本でのホッケーの知名度は決して高くない。マイナー競技とされるホッケーのみで収益を得ることは難しい。しかし普及も掲げるのであれば、駒沢ホッケー場の二の舞は避けたい。都は本来の目的達成と赤字への対処の双方に本腰を入れて取り組んで欲しい。

そしてホッケーに携わる者にも課題は残された。五輪でのサムライジャパン、さくらジャパンの奮闘をもってしても競技の認知度が上がったとは言い難い。一大学チームのマネジャーができることは少ないかもしれないが、ゲームの魅力を多くの人に知ってもらいたい。私たちの戦いの場を「負の遺産」と言わせたくない。

 

参考記事:

12日付朝日新聞(14版)1面「五輪コスト結局は?」

10日付朝日新聞(13版s)13面「耕論 スポーツ施設の未来」

同日付日本経済新聞(12版)37面「Tokyo2020から次代へ④ 「世界の人集う都市」道半ば」

2016年3月26日付朝日新聞「品川「ホッケーの街」作戦」

参考資料:

東京都スポーツ文化事業団ホームページ 駒場オリンピック公園総合運動場

東京都オリンピック・パラリンピック準備局ホームページ 大井ホッケー競技場

同ホームページ 大会後のレガシーを見据えた東京都の取組