4人妻、禁酒…若者ムスリムのリアルが知りたい!!

 タリバンがアフガニスタンで権力を掌握したことが大ニュースとして報じられ、またしてもイスラム教全体に対して「怖い」「危ない」といった負のイメージを抱く人が増えているのではないでしょうか。たしかに、過去のタリバン政権下においては、女性が拉致をされたり、職場から追い出されたりする例は後を立ちませんでした。ただ、新聞で大きく取り上げられているのは約18億人のイスラム教徒のうち、ほんの一部の過激派であるということを忘れてはいけません。

 

宗教がさほど身近にないことの多い日本人にとって、イスラムの教えには理解しがたいものも多くあります。例えば、肌の露出のない服装が求められたり、1日に5回お祈りすることが義務付けられたり。彼らはそのような戒律をどう捉えているのでしょうか。筆者は、イスラム教徒であるサウジアラビア人の友人にムスリムとしての結婚の「リアル」について尋ねてみました。

 

■4人の妻、結婚前の付き合いは禁止

一夫多妻制が認められているイスラム教徒。一人の男性が4人までの女性と一度に結婚することが可能です。これだけ聞くと、男尊女卑なのではと思う人もいるかもしれませんが、相次ぐ戦争で未亡人が増え、母子家庭で生活に困る女性を救うために導入されたとの説が有力です。もともとは、女性を守る目的で設立されたのです。妻同士の関係は不仲であることが多いそう。ただ実際のところは、すべての妻に平等に接さなくてはいけないとの教えがあり、その分お金もかかるため、4人も妻を持つことはかなり稀だといいます。

 

結婚前の出会い方も日本とは異なります。そもそもサウジアラビアには男女共学の学校が存在しないため、男女が出会う場も非常に限られています。

 

たとえば、もし男性が結婚したいと思ったら、まず母親に好みの女性のタイプや条件を伝えなくてはなりません。そして息子から理想の女性像を聞いた母親は、その希望に合う女性を見つけてくるのです。男女ともに当人の承諾が得られてはじめて、男性が女性の家を訪れ、そこで初の対面となります。30分ほど二人で談話し、そしてその後結婚するかどうか意思を固めます。もちろん、男性も女性もお互いに合わないと感じれば拒否することができます。

 

以上がこれまで主流の結婚方法でした。しかし、最近になってこのやり方は古い慣習だということで、自由恋愛による結婚を認める家族も増えているそうです。

 

■「かわいそう」を強要しない

筆者が友人との会話を通して感じたのは同じムスリムでも厳しさの段階があるということです。お酒を飲むリビア人のイスラム教徒もいれば、断食忘れていた!なんていう人もいますし、自由恋愛がしたいという人もいます。全員が全員厳しい戒律の中で生活しているわけではないのです。選択肢があったうえで、自らその道を選んでいる人がほとんどです。

 

筆者は初め、恋愛の仕方が普通と違うなんてかわいそうと思っていました。しかし、何を普通と感じるかは人それぞれで、彼らにとってはムスリムの流儀が「普通」なのです。本人が不満に思っていないのであれば、勝手な「かわいそう」という外野の思い込みは失礼にあたると思いました。

 

友人は真剣な顔でこう述べていました。

 

「他の選択肢を与えられたとしても、私はムスリムの方法を選ぶでしょう。私は自分の生活に満足しています。それが当たり前だと教えられて育ってきたから。でもだからといって自分たちと違う慣習の人のことをヘイトすることを意味していません」

 

宗教の違いを寛容し尊重する姿勢は、お互いに見られなくてはなりません。タリバンのことで、ムスリム全体にヘイトが向かないことを祈ります。

 

参考記事:

8月21日付 朝日新聞デジタル「アフガン、息潜める女性 政権崩壊1週間」

 

参考資料:

外務省「第八話 イスラム教徒の結婚 一夫多妻制」