「心の強さ」のものさしは?

部活引退まで残り4か月というところで、これまでのマネジャー生活を振り返るようになりました。ディフェンスとオフェンスの違いも分からぬまま、フィールドホッケーという未知の世界に飛び込んで早3年。練習環境を整えることに躍起になり、選手のメンタルヘルスと向き合っていなかったことに気が付きました。

長年、我がチームの課題として、メンタル面が弱いというのが挙げられてきました。先制点を決められるとたちまち落ち込み、声が小さくなります。フィールドホッケーは、ボールを持っていない相手選手を警戒する「マーク」が重要になる競技。自分が誰をマークするか声に出して味方に伝えます。その声が小さくなると陣形が乱れ、再び点を奪われる。負け試合のお定まりの展開でした。何とか持ち直してほしいとマネジャーが場外から声を掛けます。

「気持ちをしっかり持って」「気持ちで負けてるよ」

コロナ禍前、声を出して応援してもよかった頃の試合で飛び交っていました。

試合を見返すと、この声かけは正解だったのかと不安になります。選手を鼓舞したい一心でしたが、闘いの場に立つ選手にとってはプレッシャーだったかもしれない。心のキャパシティーを無理やり広げようとする発言だったかもしれない。今更ながら反省しています。

スポーツに励む人は心も強いと思われがちです。女子テニスの大坂なおみ選手がうつ病を公表するまでは、筆者もそう思っていました。汗の臭いが立ち込めるほどの夏空でも、ボールやボトルが結露するほどの寒空でも、プレイヤーは練習を止めません。歯を食いしばりながらメニューをこなす姿は、強靭な精神力を持っているように見えてしまうでしょうが。

ただ、これはスポーツ選手に限った話ではありません。心は目に見えないからこそ、外見や振る舞いだけでメンタルの強さを測ることは不可能です。外から勝手に決めつけたキャパシティーを他者に強要してはいけません。嫌なこと、苦手なことが違うように、一度に許容できる心の負荷は人それぞれです。

引退までの4か月、プレイヤーへの声かけを変えてみよう。筆者の課題です。

 

参考記事:

6日付日本経済新聞朝刊25面「アスリート うつの危険」

7日付読売新聞朝刊(東京13版)21面「エース出陣⑥ 新たな偉業挑む女王」