2017年4月に予定されている消費税率の引き上げ。もともと2015年10月に10%に引き上げられる予定でしたが、2014年11月に経済状況を考慮して消費税引き上げ時期の延期が決定されました。5%から8%への引き上げから1年5か月がたち、当初感じていた増税された商品への抵抗感が薄れこの日常にも慣れてきましたが、“軽減税率”導入への議論がまた話題となりこれからまだ増税されるのだと再認識した人は筆者以外にも多いのではないでしょうか。
商品の購入時点で複数の税率が並ぶ“軽減税率”とは異なる“還付制度”を、政府案として検討していることが明らかになりました。“還付制度”とは酒を除く飲食料品にかかる消費税の2%分を商品購入後に還付するというものだと政府は説明しています。逆進性の大きい消費税から低所得者を援助し、還付額に上限を設けることでより多く消費した人に負担が大きくなり、税収減を抑える効果も期待されています。
しかしこの案あまり賛成の声が聞こえてきません。商品購入後に還付されるということは商品購入履歴を記録しなければならず、そのためにマイナンバーのカードを利用するとしています。いちいちカードを持ち運んだりしなければならなかったり、店側は記録するための機器を用意しなければならなかったりと非常に手間がかかることが予想されています。
そもそも必要性があまり理解されていないマイナンバー。しかしこんなところで役に立つじゃないか。そんな風に無理やり思い込まされているような気がしませんか?
何を“軽減税率”の対象とするのかが今までの主な議論の対象でしたが、この還付制度案によって飲食料品の税率を一律で下げることが出来ます。軽減税率の対象となることを強く願う業界団体からの圧力も避けることが出来、政府としては一安心なのかもしれません。しかし筆者の目には、議論を避け政府の支持を保つことに注力しているだけにしか見えません。税制度こそ長い視点で国民のためになる制度であり、無理なく運用し続けられるシステムでなければならないはずです。
また、還付金が戻ってくることで実質いくらつかったことになるのかではなく、今いくら使えるかを考えるのが普通の消費者であると思います。一消費者としてこの制度を捉えてみても効果には疑問を感じざるを得ません。
参考記事:8日付朝日新聞朝刊(東京13版) 1・2面
8日付読売新聞朝刊(東京13版) 1・2・11面
8日付日本経済新聞夕刊(東京4版) 1面