「部活したくて教員になったわけじゃない」 教育現場の悲痛な叫び

「部活に行きたくない」。皆さんは、学生時代にそう思ったことはありませんか。

筆者は中学時代に運動部に所属していたため、夏休みやゴールデンウィークといった長い休みの時、練習が始まる前によく思っていました。しかし今や、顧問の方から「部活行きたくない」の声があがることが多くなっています。部活動は我々が思っているよりも遥かに教員の大きな負担になっているのです。

「部活をしたくて教員になったわけではありません。授業をしたくてなりました」。この言葉は、5月に開催された現役教師によるオンラインイベントで読み上げられた20代男性の訴えです。経験がないスポーツの顧問にさせられ、精神的な苦痛を受けているという意見もありました。日本体育協会の調査によると、担当している部活動の競技経験がないと回答した教員は46%。半数の教員が同じ境遇にあることが伺えます。

オンラインイベントにとどまりません。文部科学省が企画した#教師のバトンプロジェクトをみていくと、部活問題についての教員の叫びが次々と記されています。朝日新聞がSNS分析ツールを使ったところ、321500件近いツイートが呟かれているようです。キーワードとしては、「文科相」に次いで「部活動」が多く、その内容は深刻です。

#教師のバトンから訴えを一部引用したいと思います。どれも、教員本来の仕事以上に部活が負担となり、プライベートな生活が犠牲になっていることがわかります。

<まだ中学校教員になって3週間だけど正直あと1年でやめようと思う。理由は部活動。学級経営で頭がいっぱいで教材研究もろくに出来ていないのに、放課後休日は部活動って意味わからん。> 

<試合+審判。審判の講習も自費。審判の為の靴や服お金までも自費>

<旦那が顧問している野球部が勝った。GWも部活が決定した。それを聞いて、うちの子供たちは怒って泣いた。私も悲しかった。おめでとうと言ってあげるべきなのに、涙が止まらない>

何故このような実態が改善しないのでしょうか。実は、顧問教員の負担を減らすために何度か部活動の外部化が図られていました。「コーチ」を招いて、指導にあたらせるというものです。しかし、結局は活動で起きた事故などへの責任が不明確であることなどから、外部指導者だけでは大会等に引率できないケースが少なくありません。外部指導者に任されるのは、技術的な指導のみとなることが多く、部活顧問の負担減には繋がっていません。もうひと押しの改革、対策が必要なことは明白です。

文科省は、2023年度以降、休日の部活動の段階的な「地域移行」を図るとは述べています。具体的にどのようなものなのでしょうか。説明では、休日に部活動に携わることを希望しない教師は部活動に携わる必要がない環境を構築し、指導を希望する教師には兼職兼業の許可を得た上で引き続き指導を行える環境を整えることを約束するそうです。個人の希望を尊重する方法に変更すると言えるでしょう。この試みは、果たして効力を発揮できるのでしょうか。もしも状況が改まらない場合は、部活動自体を廃止し、外部のスポーツクラブに完全に委託するといった強制的な変革さえ必要になるでしょう。

元々は文科省が、教師の「イイ話」を広げることで教員志望者を増やすことを狙った#教師のバトンプロジェクト。それがブラック労働の訴えの場になってしまうほどに、現場の先生は疲れ果てています。我が国の教育現場の未来のためにも、早急に身を削るような労働環境の改善を求めます。このままでは教職を志す人などいなくなってしまいます。

文部科学省のサイトより引用#教師のバトンの呼びかけ

筆者のスマホで、スクリーンショットにより撮影#教師のバトン部活動で検索すると次々と苦言を呈するアカウントが見つかる

 

参考記事: 6月8日付 朝日新聞 朝刊 東京1321面「顧問教師ら 働き方改革の本音は」 

参考資料:

文部科学省 「教師のバトンプロジェクトについて」https://www.mext.go.jp/mext_01301.html

文部科学省 「第4回学校における働き方改革推進本部を開催し、部活動の改革などについて議論を行いました。」  https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2020/20200901.html