無観客ライブはライブなのか

筆者は今、栃木県の音楽イベント会場にいます。検温・マスク・フェイスガードをしてジャズライブの運営の手伝いをしています。参加者も住所や電話番号を記入し、間隔をあけて設置された椅子に座って楽しんでいました。

幾度にわたって議論されてきたのが「音楽イベント」の必要性です。密閉、密集、密接を避けられないとし、東京都は緊急事態宣言中に無観客での開催を求めています。

無観客でのライブ開催というと、演奏者のみが集まって演奏する「オンラインライブ配信」や、演奏者も別々な場所から離れて参加する「リモートセッション」を思い浮かべる人が多いと思います。その認識は間違っていません。確かに、対面で実施された本日のライブ出演者もそう語っていました。

では、それはライブなのでしょうか。

以前に、ジャズのライブ配信を視聴しました。画面を見て、音楽を聴いて、とても楽しかったのは確かです。料金も割安で、どこでも楽しめます。でも、何故か終わった後の満足感が対面のライブと比べて少なかったように感じました。

ツイッターの検索欄で「ライブ」と検索すると、多くの人が対面でのライブを楽しみにしていることが分かります。一部には対面ライブに批判的なツイートもありますが、開催を歓迎するツイートが多く見受けられます。

対面ライブを望むのは演奏者も同様です。2年前に早稲田大学を卒業したドラマー、川口千里さんは「コロナの状況を経験して、ライブの意義が変わった」と話してくれました。「オンラインもいい演奏ができる。ただ、観客の反応を見ながら演奏すると、その場でしかできない演奏ができる」というのです。

マスク着用の上、リハーサルを行う川口さん(22日、筆者撮影)

すべての音楽家より良い演奏を求めて活動しています。川口さんが「オンラインライブは、観客の反応を見ることができないことが辛い」と話していたことが印象に残りました。演奏者側にも、オンラインライブ特有の悩みがあることが分かります。

本日訪れたライブ会場も、昨年はほとんどのイベントが中止になったと聞きます。会場の運営者によると、イベント収益は減り、ライブ開催時に必要な音響の仕事もなくなってしまったようです。ライブは観客、演奏者だけでなく、様々な人が関わりあって成立するものです。

音楽イベントには様々な人が関わっている(22日、筆者撮影)

この状況下で、多くの人が知恵を出し合ったおかげで、新しい音楽の楽しみ方が増えたことは喜ばしく思います。しかし、対面でないと体験できないものもあると考えます。

音楽にとどまりません。営業自粛を強いられる映画館や劇場も同じです。感染防止対策は最優先事項ですが、十分に対策をしたうえでのイベント開催は受け入れられるものではないでしょうか。

一カ月を超える緊急事態宣言が発令されている今、考えてしまいます。

 

参考記事:

22日付 読売新聞朝刊(埼玉12版)27面「音楽を楽しみ続けるために」