《カトリック系住民が増加する北アイルランド》
アイルランド島はアイルランド共和国とイギリス領土の北アイルランドが共存しています。1801年から英国に併合されたアイルランドは、英国によるカトリック系住民の抑圧を受けてきました。第一次大戦以降、独立運動が活発化して戦争にまで発展します。闘争の末、1921年に両国は北アイルランドを分割する英愛条約に調印し、イギリス陸軍が撤退。1922年に憲法が制定されアイルランド自由国として発足しました。
しかし、イギリス帝国内自治領としての処遇にアイルランド国内で内戦が起こることになります。さらに第二次世界大戦後は北アイルランドで紛争が激化し、1998年にようやく和平合意が成立しました。欧州の歴史でしばしば見られるように、隣国間の関係は決して穏やかなものではありませんでした。
昨年2月、筆者はアイルランドの首都ダブリンでホームステイをしました。週末に訪れた北アイルランドが印象に残っています。
国境はどうなっているのか。行きの電車、帰りのバスで期待しながら車窓を覗いていましたが、大きな変化はありません。検問も検札もなく、Googleマップの現在位置表示が北アイルランド入りを教えてくれただけでした。
昨年末に英国とEU間で合意した自由貿易協定では、EU経済圏のルールを北アイルランドでも適用することを認めています。一方、英本土と北アイルランド間で通関手続きを行うことになり、経済的には「一国二制度」になったとも言われています。
そんな北アイルランドは今月3日で、英国統治100年を迎えます。英国統治継続を望むユニオニストと、アイルランドへの帰属を求めるナショナリストが現在も対立しています。そして、多くのユニオニストはプロテスタント系で、ナショナリストがカトリック系とされています。かつては、プロテスタント系が多数を占めていましたが、今年の北アイルランド国勢調査ではカトリック系が過半数を超えると予測されています。
《独立派が過半数を超える見通しのスコットランド議会選》
9日の読売新聞朝刊では、6日に行われたスコットランド自治議会選挙で独立派が過半数を得る可能性が高まったとの記事が掲載されていました。EU離脱を機に、独立論が再燃しているようです。
EU離脱の是非を問う16年の国民投票は英国全体で離脱賛成が半数を超えた。英国の人口の大半を占めるイングランドで多数が離脱を求めたためだ。一方、スコットランドでは62%が残留を支持し、住民には「イングランド偏重だ」との不満が募った。今回の自治議会選の結果は、こうした民意を鮮明に示すものだ。
スコットランドが独立を求める背景は、英国議会でのスコットランド議員の議席が少なく、民意が反映されにくい現状があります。また、北海油田の利権獲得も独立を目指す理由のようです。
ロンドン近郊から来た留学生が、スコットランドにいる女性を「Scottish girl」と呼んでいたことを思い出しました。イングランドからスコットランドはどのように見えるのでしょうか。
《両地方の名産品で乾杯》
英国の将来に大きな影響を及ぼすアイルランドとスコットランド。共通しているのは有名なウイスキー産地であることです。すっきりとした口当たりで知られるアイリッシュと、スモーキーな香りが特徴のスコッチ。諸説ありますが、どちらもウイスキーの起源に最も近いとされています。大学生の分際でちょっと高級なお酒を楽しむことに後ろめたさを感じながら、今夜は友人と「オンライン飲み会」をしたいと思います。イギリスの今後を考えながら・・・。
参考記事:
9日付 読売新聞朝刊(埼玉13版)3面「英国『分裂』の足音」
参考資料:
時事通信 「北アイルランド『誕生』100年 くすぶる帰属問題」
ロイター 「スコットランド独立に『賛成』する理由」