昨年の夏、とても夢中になっていた漫画がありました。無料アプリを使い、一日に一話ずつ、読み進めていました。
そんな時、「オススメの漫画サイトがあるよ」と友人から2つのサイトを勧められました。どちらも海外のものです。サイトを開き、検索をかけると、信じられないことにかなり先の話まで公開されています。しかも無制限で読めるのです。その感動も束の間。読んでいるうちに卑猥な動画が複数流れてきました。「なんだか怪しい」これが私の印象でした。聞くと友人は利用している訳ではないのですが、大学の仲間内で出回っていると言います。結局、怖くなってその場で利用するのを辞めました。
26日の読売新聞の朝刊にはこう書かれています。
昨年の推定被害額が2114億円に上った。今年も毎月300億円を超えているという。
これは海賊版サイトにおける出版業界の損害額です。「海賊版」とは権利者に無断で発売または流通される非合法商品を指します。「巣ごもり需要」の背景もあり、違法サイトは今も700以上が存在しているというのです。
記事を読んだ時、先月参加した出版社でのインターンでのやりとりを思い出しました。「一つの書物を世に出すのには多大な時間と労力を要する」。こう話す社員さんの言葉が私の心に強く響きました。5日間という短い期間でしたが、デスクに四六時中向き合う編集者の姿を見ていると、出版の形になるまでの苦労が伝わってきます。漫画に限らず書物の値段は人件費を考えるととても安いです。手間暇かけて執筆し、編集したものには無数のプロの命が吹き込まれています。安易な違法サイトの閲覧は彼らへの冒涜にも等しい振る舞いです。
果たしてこのまま出版業界は泣き寝入りでしょうか。記事を読み進むと、対策が記されていました。
業界団体は、「きみを犯罪者にしたくない」というメッセージを掲げた海賊版サイトの撲滅キャンペーンを始めた。
ネットの検索機能で「海賊版」と入れてみてください。「STOP!海賊版」と書かれたサイトがトップに出てくるはずです。クリックすると有名作品とコラボをした「パトロールバナー」のイラストが現れます。涙を流すキャラクターたちの訴えに、少しでも海賊版サイトで漫画を閲覧してしまった自分を恥じました。
サイト内には、著作権者からコンテンツの使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す「ABJマーク」の説明もあります。
閲覧する側は罪悪感を抱いていないことが少なくありません。まずは出版社、そして作家の思いをどうか汲み取ってください。どれほど被害を受けているのか、その現状を知って欲しいと思います。
参考記事:
26日付 読売新聞朝刊(埼玉13版)3面「安易な閲覧は出版文化を脅かす」
参考資料:
「STOP!海賊版」