地域間送電網の増強 生活はどう変わる?

「今日は停電するかもしれないからアイスは買わないよ」

10年前、東日本大震災によって電力の需給バランスが崩れ、一部の地域では計画停電が実施されました。停電予定日、夕方に母親と訪れたスーパーで言われたことを思い出しました。当時、私は小学生でした。

助手席から、ブルーシートがかけられた屋根を見ながら帰宅しました。震源から離れた栃木県も場所によって大きな被害がありました。震災から1週間も経ってなかったと思います。家に到着し、車から降りた瞬間に周りの家の明かりが一斉に消えました。

テレビも、照明も、電子レンジも使えません。初めのうちこそ懐中電灯を片手に弟と家じゅうを走り回って遊んでいましたが、その後は何もできないまま1時間を過ごしたことを覚えています。

幸い、大規模停電(ブラックアウト)は発生しませんでした。とはいえ、数か月にわたり、公共施設でエスカレーターの運転を停止するなど、日本中で節電に努めていました。

そして、2018年9月6日の北海道胆振東部地震。日本初のブラックアウトが起きてしまいました。地震により、道内で最も大きな火力発電設備である苫東厚真発電所が停止。その後も複数の発電所が止まったためでした。

 

本日の日経新聞朝刊には、経済産業省などが地域間送電網を今後2倍に増強する計画案をまとめたとの記事が掲載されていました。これがあれば、大手電力会社の供給エリアをまたいで電気を送ることができます。念頭にあるのは、再生可能エネルギーの効率的な利用ですが、地域間での電力の融通は、災害時にも大きな役割を果たします。記事には、次のような説明がありました。

2011年の東日本大震災は既存の仕組みの限界を浮き彫りにした。福島第1原子力発電所などが被災し、東京電力エリア内で供給力が大幅に減少した。全国的には十分な供給力があったにもかかわらず、東電管内は計画停電を迫られた。連系線の容量がネックとなり、不足分を補う電力を融通できなかったためだ。

日本が欧州のように供給域間を超えた送電網を整備してこなかったのは、各地域で独占的に事業を運営してきた電力会社の歴史的な経緯や既得権が絡むためとされます。

しかし、災害時にも再生エネルギーの活用にも、各電力会社間の連携は欠かせません。拡充された送電網が整い、ブラックアウトの心配がなくなり、より安いグリーン電力が家に届くのはいつになるのでしょうか。

福島県浪江町の請戸漁港から見える福島第一原発の排気塔(3月10日筆者撮影)

参考記事:

16日付 日本経済新聞朝刊(東京13版)1面「地域間送電網 容量2倍」 関連記事3面

参考資料:

経済産業省 資源エネルギー庁 日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか