東大合格者 女子の割合増やすには

桜満開、春到来。緊急事態宣言下の入試を乗り越えて、全国各地の学校は新年度を迎えています。筆者が通う大学でも、リモート授業で閑散としていた昨年と変わり、キャンパスに活気が戻ってきました。新入生が健康診断や履修説明会のために長蛇の列を作り、上級生は新歓のビラ配りに精を出す。新年度の訪れを実感します。

同時に、別のことにも気付きました。周囲を見回すと、地味なシャツを着た黒髪のメガネ男子ばかり。昨年度まで登校していたキャンパスは女子が大多数を占めていたのですが、まるで男子校に戻ったかのような環境に違和感を覚えました。

昨日の朝日新聞も、日本を代表する教育・研究機関で女子学生が極端に少ないという問題を取り上げていました。今年の東大の入試では、合格者に占める割合が過去最高ながら、僅か21.1%。不健全な現状に、国内外から厳しい目が向けられています。上野千鶴子名誉教授は、女子に一定数の枠を割り当てるクオータ制の導入を主張しており、駿台教育研究所の専門家も、3〜4割を本気で目指すなら、これまでにない入試制度やカリキュラムを検討すべき、と新聞紙面で述べていました。

大学や会社を含めどんな組織においても、比率は半々が望ましいと思います。それが無理にしても、1:2〜2:1の範囲内。筆者は学内外の様々な組織やサークルに参加していますが、女性がいる方が多様な意見が出て、議論が活性化しやすいと感じます。飲み会だって、両性いた方が会話が弾んで楽しい。しかし、クオータ制などという強引なやり方を用いて大学内の不均衡を直すことには、断固反対します。

日本は、男女平等の推進が遅れていると言われていますが、教育面の格差は殆ど存在しません。世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数2020」によると、日本のスコアは0.652。(0が完全不平等、1が完全平等を示す)総合順位は153ヶ国中121位ながら、教育分野に限れば0.979。スコア総合首位のアイスランドと大差ありません。

データを無視して、女子の合格点を引き下げるやり方は、男子に対する逆差別になると思います。公立高校入試では、逆に男子の合格点が低く設定されているのですが、これも当然良くない。筆記試験においては、性別関係なく、少しでも点数の高かった人が合格する、というのが筋道通った公平なやり方だと思います。では、どうすれば難関大学の男女比の偏りをただすことができるのか。私は試験問題の変更を提案します。文系科目、特に国語と英語の問題を難化させたうえ、点数配分を増やすのです。

男女の総合力に優劣は存在しないとはいえ、やはり分野によって得意不得意があります。日本の大学入試は理系科目の難易度が高いため、女子に不向きな仕組みです。筆者は3年前、米国の大学適性試験(SAT)を受験しましたが、数学と理科が極めて簡単でした。数学Ⅱ・Bや理科発展レベルは出題なし。米国と比較すると、東アジアは数理系の教育水準が高く、これが女子の難関大学合格に対する重い足かせとなっていると筆者は考えます。国公立大学は、文系学部の受験でも、数学の勉強が必要ですし。

女子が得意とする国語や英語の難易度をつり上げて点数配分も増やす。そうすれば、性別関係なしの点数至上主義を維持したまま、歪な状態を改善できるはずです。英語については、幼少期から英会話教室に通ったり海外留学したりする、裕福な家庭の子女が有利となる欠点も孕みますが、国語の難化に反対する人はいないでしょう。子供の読解力低下と活字離れに警鐘を鳴らす意味合いでも効果的です。

安易に女性の数を増やすよりも、試験の公平さ維持が最重要。東大をはじめとする諸大学には、試験問題の調整を通じて、是正に取り組んで欲しいと思います。

 

参考記事:

5日付 朝日新聞朝刊(大阪13版)19面「東大に女子は増えるか」

東京大学の安田講堂(朝日新聞デジタルより)