気付かないのはもったいない!型破り広告の世界

赤の地に浮かび上がるユニクロのロゴ、赤と緑が対照的なセブンプレミアム、TをスマートにデザインしたT-POINT。さらにはどこか江戸風情が漂う今治タオル。多くの方が知っている、もしくは使ったことのある店やアイテム。これらに共通点があることをご存じでしょうか。もしイメージできなければ、次のURLでご覧ください。

KASIWA SATO

 

正解はクリエイティブディレクター佐藤可士和(かしわ)さんがロゴを手掛けている点です。クリエイティブディレクターとは、広告制作における責任者のこと。デザイナーやコピーライターなどのスタッフを指揮管理します。日本でも2000年代から、広告のみならず企業や商品のブランディングをも手掛けるクリエイティブディレクターが現れました。その筆頭が佐藤さんです。

先日東京都六本木で行われている「佐藤可士和展」に足を運びました。会場となっている国立新美術館のロゴも彼がデザインしました。

佐藤可士和展のパンフレット、左下が国立新美術館のロゴ(18日筆者撮影)

誰もが見たことのあるロゴが3メートル以上の巨大絵画やオブジェとして飾られ、見る者の目に飛び込んできます。「あ!見たことある!」と口に出さずにはいられません。筆者もその1人。父が繰り返し聞いていたSMAPのアルバム「Drink!Smap!」。幼稚園から帰って必ず見ていたNHK『えいごであそぼ』のキャラクター「ケボ」と「モッチ」。セブンイレブンに行くとつい買ってしまう「素材のおいしさ 枝豆チップス」のパッケージまでも。何をモチーフにするか、どこにロゴを置くかが緻密に計算されているようです。彼の手にかかれば、どんなものも視覚を通して人々の記憶に残り続けます。

国立新美術館のホームページからは、展示会でも紹介されている佐藤さんの広告に対する考えを知ることができます。「広告を載せるのならテレビ、ラジオ、新聞、雑誌」という前提に捉われていません。彼の仕事ぶりが、人の目につくものであればなんでも、デザインを加えることで情報を伝える術として有効だと示しています。

今日の日本経済新聞朝刊に面白い広告の手法が載っていました。タクシー配車アプリ大手のS.Rideが6月からタクシーの車窓に広告を投影するというのです。タクシー広告といえば、車窓に貼られたステッカーやアドケースと呼ばれる背もたれ部分のラック内に置かれたリーフレットなどを思い浮かべます。S.RIDEが導入するのは、空車時にプロジェクターで静止画を投影するというもの。タクシーも人の目につく限り、立派な広告媒体となり得るのです。

車窓に映し出されるデジタル広告(日経電子版より)

私たちが意識しなくとも目につくよう工夫が施されている広告の数々。とはいえ広告の受け手も感覚を研ぎ澄まさなければならないと感じました。遊び心満載で、型破りの世界に気付かないのはもったいない。佐藤さんの作品が教えてくれています。

 

参考記事:

18日付日本経済新聞朝刊(東京12版)15面「タクシー、街の広告媒体に」

参考資料:

2021,『penBOOKS新1冊まるごと佐藤可士和。[2000-2020]』,CCCメディアハウス