大震災から10年 全国紙と東北の地方紙は何を叫ぶのか

東日本大震災からちょうど10年。当時は小学6年生だったが、今でもテレビに映し出された津波の光景は鮮明に覚えている。国民にとって特別な日である「3・11」に、全国紙と東北の地方紙は何を主張するのか。

<全国紙3社>

朝日新聞は「事前復興」の考えを打ち出した。各地域での防潮堤の建設を例に、前から市民参加のまちづくりに取り組むことが重要で、自治体と住民だけでなく、住民間の話し合いも欠かせないと説く。石巻市雄勝地区は「千年に一度」の大津波に耐えられるまちに生まれ変わったものの、いまだにしこりが残っている。市から示された「防潮堤と高台移転」の案に反対する人には、市幹部が説得に回り、抗えない状況がつくられていった。まちづくりの主役は住民であり、国や自治体は支援にまわる役目であるべきだと強調する。

読売新聞は、震災の体験を語り継ぎ、次代の教訓にすることを呼びかけ、「事前復興」の重要性を主張している。同紙の世論調査では、被災地への関心が薄れていると感じる人が9割を超えた。教育現場で震災の教訓を伝える、語り部活動などを続けることが、将来の被害軽減につながると指摘する。

日本経済新聞は①災害大国という現実を受け止め、「ゼロリスク」という幻想を捨てる、②いつも自分事として考える、を提言する。いつ、どこで大地震が発生してもおかしくない日本。大震災以降の10年間にも、16年の熊本地震、18年の大阪北部地震など、震度6弱以上は25回を超えている。最新の科学技術であっても予知や防止には無力というほかない。しかし、自分事として考え、行動に移すことは可能だ。次の災害に立ち向かう糧にするべきだと唱える。

<東北の地方紙3社>

河北新報は復興の光と影について言及。時が止まったままの帰還困難区域や、宮城、岩手両県と福島県の復興格差などを指摘する。2県はハード面での整備が総仕上げに入っているのに対して、福島県は原発事故の影響で長期化している。また高齢化と人口減少の加速だけでなく、被災者の「心のケア」も重要な課題だと強調する。

福島民友新聞も帰還困難区域にどう光を当てていくのかを課題としている。復興が進んでいると実感する一方で、生活環境はまだ十分とは言えない。自治体同士が連携を強め、足りない機能を補う。心の復興などにも焦点を当て、血の通った政策を打ち出していくことを求める。

福島民報は「創造的復興」を成し遂げ、全国の手本となるための新たなスタートにしたいとする。未来の福島県民の姿を思い描き、過去の状態に戻る復旧ではなく、以前よりも活気にあふれる安全なまちづくりへ。農業に最新技術を導入するなど、持続可能な社会を築く創造力が求められていると見る。

<まとめ>

全国紙は①「事前復興」に取り組む重要性、②震災を自分事として、伝承や備蓄などの行動に移すことの2点を指摘。一方、地方紙は①「心の復興」の重要性、②未来に向けた、具体的な復興後の姿の2点について論じている。

 「復興」という言葉を意識しなくなったときが復興の達成―という言葉を聞いた。きょうを、そのときに向かって力強く一歩を踏み出す出発点としたい。(福島民友新聞)

 インフラの原状回復が復旧の目的なのに対し、復興は創造的であるはずだ。(河北新報)

いくつかの社説を読んでいて、上の言葉が心に響いた。私たちが考えている復興は、もしかしたら復旧の意味ではないだろうか、本当の意味での復興とはなんだろうか、私にできること、すべきことはあるのかと疑問がふつふつと湧いてきた。

震災からの10年という月日はあっという間だった。震災当時を体験した者として、果たすべき役割はあるはずだ。まずは身近なことから、前向きに取り組むしかない。

参考記事:

11日付 朝日新聞朝刊13版14面「『主役は住民』の理念新たに」

同日付 読売新聞朝刊13版3面「惨禍の教訓を次代につなごう」

同日付 日本経済新聞朝刊12版2面「巨大地震からも命を守る減災の国へ」

参考資料:

11日付 河北新報 社説「東日本大震災10年/復興格差、心のひずみに目を」

同日付 福島民友新聞 社説「3.11から10年/連携深め復興を加速させよう」

同日付 福島民報 論説「【震災10年 創造的復興】地域づくりの手本に」