3.11 伝承や復興といった言葉の裏には

 

先日、電車に乗っていると、トレインチャンネルで東日本大震災に関するニュースが流れていました。「防災教育と伝承の日」に 3.11、大学関係者ら提唱、というタイトルです。大学関係者らが、3月11日を全国各地で防災教育や伝承活動の実践の重要性を認識する日とすることを提唱しているとの内容でした。震災から間もなく10年。次の世代にどうやって伝えていくのか、語り継いでいくのかがこれからの課題なのだなと感じました。

仙台のタウン情報誌machicoが毎年実施している「震災に関する意識調査」を見ると、多くの人が震災に区切りをつけ、前を向いているように思います。「あなた自身の生活について、東日本大震災の発生から、回復・復旧を実感していますか?」という問いに対して、2020年度は、32.7%の人が回復・復旧を非常に実感していると答え、45.1%の人が回復・復旧をやや実感していると回答しました。これらの数字は、13年の調査開始以来、年々、高くなっており、筆者は、多くの人が、震災以前の生活に戻れているものと思い安心しました。

しかし、本日の読売新聞朝刊を読んでいると、筆者の考えは間違っていました。「[防災ニッポン]津波・生活再建<下>「心の傷」 語り集って克服へ…「傾聴」展開するNPOも」は、東日本大震災を経験した被災者の心の状態を紹介。以下のように書かれていました。

東日本大震災からの復興の過程でも、心の健康状態が悪化する被災者が見られた。東北大高齢経済社会研究センターが被災3県の約800人に2014年と20年に行った調査では、「良い」「まあ良い」と回答した割合が、計27.4%から21.3%に減少。「神経が過敏である」「何をするのも骨折りだと感じる」などと訴える人も増えた。

記事を読んで、東日本大震災の被災県3県では、心の健康状態が良好な人が減っていると知りました。また甚大な被害などで心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病、アルコール依存といった症状を抱え、専門家への相談が必要な被災者もいる。復興が進む中、生活再建が順調な人とそうではない人の差が徐々に開いていく『はさみ状格差』が生まれ、『取り残された』と落ち込む被災者も少なくない」という文章から、取り残された被害者がいるということにハッとしました。

多くの報道が、10年を区切りの年として、復興や伝承という言葉を使い、読者である筆者もうのみにしていました。しかし、いまだに苦しんでいる人も多くいます。将来に目を向けることは大事ですが、それと同時に、取り残された人々の存在も忘れてはいけないと感じます。

 

参考記事:

2月19日読売新聞朝刊くらし面(東京・12版)「[防災ニッポン]津波・生活再建<下>「心の傷」 語り集って克服へ…「傾聴」展開するNPOも

参考資料:

machico「震災に関する意識調査2020