ファジーネーブルを嗜む男子、ビールを嗜む女子

《ファジーネーブル》

ピーチリキュールをオレンジジュースで割ったカクテル。甘みと酸味が合わさったフルーティな味わい。アルコール度が低く、お酒が苦手な方でも飲みやすい。

 

昨日バラエティー番組の企画で、お酒を飲みながら芸能人が語らっていました。そこで、ある男性芸人さんの手元にあるさわやかな色の飲み物に注目が。彼が「ファジーネーブルです」と答えると、「女子か!」と突っ込まれていました。

これを見て思い出したのは、女性である筆者が以前居酒屋に行った時のこと。店員さんの運んできたお酒をさばく役回りになった知り合いの女性が、笑いながら「え、これあなたの?おっさんじゃん!」と私にビールを渡し、みんなの注目が集まったとき、少し恥ずかしい思いをしました。

男女で飲むお酒が違うというイメージはまだあるのだろうか。気になって、「ファジーネーブル 女子」と検索をかけると、たくさんヒットしました。「デートで女子に飲んでほしいお酒」という記事では、ファジーネーブルについて「お酒に慣れていない感じがするから遊びなれていない印象を受ける」という男性の声が紹介されていました。ビールをジンジャーエールで割ったシャンディガフを推す27歳男性からは、「ビールを飲んでいる女性を見ると、ちょっとがっかりするけど、シャンディガフはオシャレポイントが高い」との意見が。記事が投稿された日付を見れば、2020年4月。驚きました。

私の親がお酒を飲むとき、大抵その手にはビールグラスがありました。だから、私の中ではお酒といえばビール。大人に近づく憧れから喉へ流し込んでいたホップの苦味も、段々とその美味しさがわかってきました。お酒に弱く、1度に飲めるのは2杯どまり。せっかくの1、2杯を甘くてジュースのようなドリンクにするのは何となくもったいない気がしてしまい、ビール以外なら好んでアルコール感の強い、甘くないお酒を選びます。

そもそも、「ビールが飲める=お酒に強い」わけでもないし、「遊びなれている」わけでもない。これは男女に限らず言えることですが、女性だとなぜかよりネガティブな印象になってしまう気がします。筆者も周りの目を気にせずに頼む方ではありますが、それでも女性が全員カクテルを頼んでいるなかビールを頼むのは、気が引けます。

意味のない枠を作りだしてそれにあてはめることは、柔軟に考える際の妨げになることがあります。「男性だけでカフェに入る」「メイクをする男性」「専業主夫」「お酒で赤くならない女性」「キャリアのある女性」——男女を逆転させたなら何もおかしくないことでも、まだ雑談のネタになってしまう。そんなことにしばしば出会います。好きなお酒を心置きなく飲めることは「人権」というほどのことではないでしょう。しかし小さな芽に敏感になることは、もっと大きくて重要なジェンダーの枠を壊すことにつながるのではないでしょうか。「わきまえる」ことなく、自分の好きなことを思い思いにできる社会を築いていくために。身近なジェンダーの固定観念をもう少し意識して、崩してみませんか。

 

参考記事:

13日付 日本経済新聞夕刊(愛知1版)3面(総合)「日本、性差別の問題残る 森氏辞任で海外メディア」ほか 森氏女性蔑視発言問題 関連記事