障がい者への配慮、想像膨らませ

読売新聞に連載している詩歌コラム「四季」に、1日から苅谷君代さんの歌集『白杖と花びら』が紹介されています。

ゆっくりと歩くわたしの肩先に誰かぶつかりたちまち消えぬ

先天性緑内障で視力を失った苅谷さんが、日頃外で危ない思いをしていることが五七五七七で伝わってきます。

 

筆者は、視覚障がいを持つ方の隣で、安全に歩くお手伝いをするガイドヘルプをしたことがあります。事前研修で、白杖を持つ方と歩くときに気を付けること4箇条を教えてもらいました。

①介助者の肩に手を乗せてもらうこと

②周りの風景を伝え続けること

③「あちら」「ここ」など指示代名詞を使わないこと

④どのような状況でも白杖を掴まないこと

どれも知っておくべきことですが、特に④が重要です。この4箇条を教えてくれた方自身も、白杖を右手に外に出ます。以前工事現場の前を通っていると、危ないからと警備員に白杖を強く引っ張られたことがあるそうです。急に掴まれると、地面から感じ取る街並みの情報から遮断されてしまい、非常に不安になるのです。警備員の行動は、おそらく親切心から生まれたものでしょう。それが視覚障がい者にとって、思わぬ脅威につながることを知らないから。

 

困難に直面しているのは、視覚に障がいを持つ人だけではありません。関西大学と滋賀県草津市が共同で実施した調査によると、聴覚障がい者の4人に1人がコロナ禍で嫌な思いをしたことがあると回答。そのほとんどがコロナによる生活の変化が原因です。「聞こえにくいので顔を近づけると嫌がられる」、「マスクを外してほしいと言いにくい」、「音声が聞き取れずテレワークが困難」など。マスク、ソーシャルディスタンス、オンライン通信が意思疎通の邪魔をします。

 

私たちは、障がいを持つ人の視点に立つことができていない気がします。どのようなことをすれば安心してもらえるか、何か困っていることはないか。想像をめぐらせることは決して容易ではありません。人と人の距離を取ることが求められる今はなおのこと。人によって、種類や度合いが異なるためどの対応が正解とは言い切れません。障がいの有無に関わらず誰もが安心して暮らすため、人々の想像力と思いやりが試されています。

 

参考記事:

6日付朝日新聞朝刊(東京13版)25面(生活)「盲導犬連れた人 どう迎えれば」

5日付付読売新聞オンライン「マスク聴覚障害者に「壁」

1~6日読売新聞朝刊2面コラム「四季」