作曲家・筒美京平の死去。昭和歌謡曲を小さい頃から好んでいた筆者にとって、衝撃的なニュースでした。現在のJ-POPは秋元康がプロデュースする坂道グループ(乃木坂46など)、シンガーソングライター、バンドがヒットしているせいか、作詞家・作曲家が注目されにくくなりました。その一方で、約40年前のヒット曲を振り返る番組が、今もなお放送されています。
私が良いなと思った曲を調べると、ほとんど彼の名前が載っていました。斉藤由貴の「情熱」、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」、野口五郎の「グッド・ラック」など、挙げればキリがないほどです。
彼の曲には歌謡曲特有の古臭さを感じません。なぜだろうと気になり、彼の経歴、エピソードを調べてみると面白い話がありました。海外の輸入盤が手に入りにくかった時代に、いち早く新譜をまとめ買いして聴きあさり、それらを参考にして曲を作っていたそうです。仕事をともにしたプロデューサーは、打ち合わせ前に最先端の音楽や風俗をいくら勉強しても、彼の知識量には敵わなかったと話します。音楽に関する莫大な知識が斬新さを生み、ヒット曲を連発していたのでしょう。
「今、俺たちが聴いている曲って、何十年先も語り継がれるのかな」
音楽好きの友人は不安そうに話しました。Apple Musicを筆頭にサブスクリプションが主流になり、どんな場所でも手軽に、莫大な量の曲を聴けるようになりました。便利ではありますが、レコードのように一つの曲をじっくり鑑賞するという「姿勢」が失われているように感じます。アームがゆっくりとレコードの中心に向かう姿を見ながら、1曲1曲を大事にするという経験は必要だと思います。
またお金を払うことに敏感になってしまいました。昔はシングル盤(EP)1枚400~700円でした。しかも収録曲はたったの2曲。「A面はヒット曲で、B面はそれほど・・・」という思い出がある人も多いでしょう。今では余程ファンでない限り購入しません。
2013年に大滝詠一が死去した時も、似たような感覚に襲われました。J-POPを長く支えてきた功績者です。しかし、過去ばかりに目を向けて悔やんでも仕方がありません。問題は「1つの曲に対する姿勢」です。一度でいいからレコードで聴いてもらいたい!そう深く願っています。
参考記事:
13日付 日本経済新聞朝刊(大阪13版)43面「筒美京平さん死去」
19日付 日本経済新聞朝刊(大阪12版)36面「時代作った孤高の作曲家」