「消費」は企業へのメッセージ

全世界的に食料需給の逼迫が深刻化しつつある。

21日付の読売新聞朝刊では、食料難問題について1、2面にわたって特集記事が展開されていました。今年はコロナ禍による経済停滞で、最低限の食料の入手さえ困難になる人が倍増し、2億7000万人に上るといいます。今後大幅な人口増が予想されるアフリカなどへの食料供給をどう確保するかを含め、多くの人が長期的な目を持って行動する必要があります。

2015年に国連サミットで採択された、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標「SDGs」でも「飢餓をゼロに」というゴールが掲げられました。地球全体では年間40億トンの食糧が生産されており、公平に行きわたれば世界中の人にとって十分な量だと言われています。しかし先進国が過剰に買い占めることで食料の価格が上がり、途上国では手に入りにくくなっています。

日本では「フードロス」が長年問題となってきました。1日で一人当たりお茶碗1杯、日本全体では約1億杯にあたる食品が無駄になっています。

この大きな問題を解決するためにはどうすればよいのでしょうか。SDGsの実現へ力を入れる政治家に投票する。経験を積み社会的地位を上げて改革を志す。フードロス問題に取り組む企業に投資する。いずれもとても有効でしょう。しかし、大きな力が動くことを待っているだけでは、変わるまでにまだまだ長い時間がかかってしまいます。

「消費は投票」だといいます。大企業の経営者でなくても、インフルエンサーでなくても、私たち市民一人一人は日々の消費行動を変えていくことができます。スーパーの食材はできるだけ賞味期限の近い手前からとる。食事に行く際は事前に予約をしておく。国内産の食材を選んで食べる。自分の消費行動を今一度見直してみるのはいかがでしょうか。

国際通貨研究所理事長、渡辺博史さんはこう言っています。

「『食べる』という人類の基本的営為を、大きな軋みをもたらさず続けていく。その方策について、もっと皆で知恵を絞るべきだ。」

地球上の誰一人として取り残すことのない未来を迎えるために。私たちの消費行動がそのまま企業への要望に、意見表明に直結していることを意識して生活したいものです。

 

 

参考記事:

21日付 読売新聞朝刊(愛知13版)1、2面「地球を読む 農業開発 寡占防ぐ必要」「国境超えた生産意識を」

参考文献:

小林亮監修『世界を変えるSDGs』あかね書房、2020年