偉人アンドロイドから考える、人工知能との共生

ゲーム好きの友人に面白いゲームを教えてもらいました。その名も『Detroit:BecomeHuman』。2018年に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。舞台はAI(人工知能)、アンドロイド(ヒト型ロボット)技術が発展した38年のデトロイトです。アンドロイドが人間のように自由に話し、動き、家事、介護、仕事をこなしながらも奴隷のような扱いを受けます。プログラムされた任務と人間に従う者、人間に反抗する者、人間と共生する者。自我と向き合う3人のアンドロイドを中心に物語は進みます。

ゲーム『Detroit:BecomeHuman』。この3人がそれぞれの葛藤を抱えるアンドロイド(公式サイトより)

ロボットと人間との関わりを描いた作品の登場は今に始まったことではありませんが、年々リアリティが増しているように思います。その分、技術革新がもたらす脅威も期待も身近に感じるようになりました。

 

本日の読売新聞朝刊に偉人アンドロイドに関する記事がありました。夏目漱石や渋沢栄一などの偉人が、その人そっくりに話したり動いたりするアンドロイドとして「よみがえる」例が多いというのです。故人の意思が分からないままよみがえらせることは、冒涜ではという意見も。AI技術を活用した創造物の扱いは、法的には定まっていません。弁護士の福井健策さんは「本人や遺族の名誉、プライバシーを害さないよう留意し、ロボットの行為や発言がフィクションであることを表示すべき」と話しています。

この記事を読み、2点驚いたことがあります。まず「教科書内の人」と思ってきた偉人との会話を可能にする人工知能技術。そして故人の尊厳を議論する動き。アンドロイドやAIが私たちの生活にどんどん浸透していくことを示しているように思えました。

偉人アンドロイド(13日読売オンライン)

 

AIは、限られた用途でのみ利用できる「道具知(特化型人工知能)」と人間と同じように課題をこなす「自律知(汎用人工知能)」に分けられます。「自律知」は未だ研究途中で、この世界には存在しませんが、人間の手に負えない問題を解決する可能性があります。そんな汎用人工知能が生まれたら、人間との線引きはできるのでしょうか。それとも違いなどないのでしょうか。正解はありませんが、その答えが求められる未来はそう遠くないかもしれません。

 

自律知が日常生活に溶け込む『Detroit:BecomeHuman』のような未来。便利だが、人間とは何かを考えないわけにはいかない未来。来て欲しいような、そうでないような…。

 

参考記事:

13日付読売新聞朝刊(東京12版)10面(英語・IT)「「よみがえる」AIひばり、手塚」

参考資料:

「人工知能」と「人間」が共存する社会 ~ SF マンガで描かれる「自律知」としての「汎用人工知能」植田康孝、木村真澄共著(2017)