現在、インターネット回線を利用する「IP電話」が乗っ取られ、アフリカなどへ国際電話を掛けられ、高額な料金を請求されるという被害が続いています。海外には電話を受けた側が情報料という名目で料金の一部を受け取れる仕組みが存在するため、これを悪用することが原因の一つと考えられています。
乗っ取りなどという卑劣な行為は許せないことですが、気になるのはNTTの対応ぶりです。国際電話サービスの利用停止を連絡してから、実際に停止されるまでの間に被害を受け、高額な請求がされる事例が10件以上もあったことが判明しました。これに対し、NTTは契約に基づき請求するとして、料金の減免は一切認めませんでした。
しかし、果たしてNTTに非はなかったのでしょうか。サービスの停止は連絡を受けた翌営業日の夜に行われていました。つまり、金曜日の朝に連絡した場合は月曜の夜になるため、4日近くも経過することになります。この現状を踏まえるとNTTにも責任があったと考えます。
乗っ取られたことは利用者の責任であったとしても、たとえ契約でサービス停止までの間の被害は利用者が負担することになっていたとしても、被害額を全て利用者に負担させるのは問題です。なぜなら、NTTと利用者には持っている情報量に差があるためです。NTTが契約をする前に、サービスの利用停止を望んでも1日以上掛かる場合があることを利用者に伝えていたとは考えにくいです。
NTTの対応としては、どんなものが考えられるでしょうか。サービス停止が間に合わなかったために被害を被った利用者に対しては、料金の一部を負担する。今後このような被害が起きないように、交換機の初期設定のパスワードの変更やパスワードを簡単な文字列にしないことを積極的に広報する。それに従わず被害がでた場合に限り、全額を請求する。こうした手順が必要ではないでしょうか。
繰り返しますが、多くの場合、サービスを提供する側と利用する側の持っている情報量には大きな隔たりがあります。そのため利用者の側に立った問題への対処が求められるはずです。
参考記事:6月22日付読売新聞朝刊(東京14版)35面(社会面)「「利用停止」連絡後も請求」