コロナ期間中でも、毎週日曜日の夜に花火大会が行われているらしい。え、どこで?と思うかもしれない。
任天堂のゲーム「あつまれどうぶつの森」、略して「あつ森」の世界でだ。
これは、あつ森ユーザーである友達から聞いた話だ。私自身は実際にプレーしたことはないのだが、Youtubeであつ森のゲーム実況中継を見たことがある。今までゲームは個人が架空の相手と対戦するものという思い込みがあったが、あつ森は無人島に暮らすキャラクターを育てて他のユーザーを交流するという。何ともほのぼのとした印象を持った。
その友達によれば、仲の良い友人同士が操作するキャラクターがあつ森上で待ち合わせ、みんなで花火を見上げたというのだ。8月は、任天堂が毎週日曜日に花火大会を設定しているらしい。このように最近のゲームは個人対個人の対戦ではなく、友達や家族と交流するSNSのような役割も果たしているのだ。そこにゲーム空間の変化を感じた。
しかし、これからはSNS以上の役割をも果たすかもしれない。本日付の日経新聞朝刊を読んで思った。ゲームは新たなビジネスのプラットフォームにもなり得る、というのだ。
ゲームの世界に、コロナはない。巣ごもり需要が増える中、企業や美術館はこの仮想空間に注目し、商品などをゲーム内で公開して新しい消費者にリーチしようとしている。例えば企業によるあつ森の活用例として、イタリアのファッションブランド「ヴァレンティノ」はプレイヤーが今春の新作コレクションを着られるようにした。また、フランスの「ジバンシイ」はプレイヤーが化粧品と同じ色のフェースペイントをできるようにした。ニューヨークにあるメトロポリタン美術館は40万点の美術作品を公開したという。
最近はeスポーツなども盛り上がりを見せ、世の中のゲームに対する見方は変わってきていた。そしてコロナ禍でオンラインでの交流が増えている今だからこそ、新しい遊びを楽しむ個人にとどまらず、情報発信の場と見た企業側もゲーム業界に乗り出しているのだ。
このことを友達に話したら、「自分のキャラクターにジバンシイの仮装メイクをしてみたよ」と言っていた。普段あつ森をしない私だからこそ、このようなゲームという「仮想空間」までがビジネスの場になっていることはとても新鮮な発見だった。そして、実際に外出して買い物をする機会が減ったことを逆にチャンスと捉え、積極的に販売促進を進める企業の戦略に、コロナに負けない強い意志を感じた。
参考記事: 7日付 日本経済新聞朝刊「任天堂「あつ森」企業集まる」