第二のふるさとを探す旅へ

一面に緑が広がる景色、どこまでも続く田んぼ、泳ぐ魚が見えるほど透き通った川・・・都会にはない風景に心を惹かれる。高層ビルやマンション、アスファルトのような人工物に囲まれた生活。不特定多数の人間が目まぐるしいスピードで動き回り、通勤時には体を押し寄せ合うことになる。

田舎暮らしを希望する若者が増えている。都会生活からの安息を求めて、田舎に憧れている。

大都会に嫌気が差している人は、田舎を「人生の楽園」のように捉えているのではないだろうか。「ゆったりとした生活」「イヤな人間関係からの解放」など、好条件が揃っているように見える。しかし、「物質的に恵まれている生活」「多くの出会い」といったメリットを捨ててまで、そこに暮らす覚悟はあるのだろうか。

「田舎で暮らしたい、なんて簡単に言わないほうがいいよ」

生まれてから高校卒業まで岐阜県に暮らしていた母は、繰り返し言う。例として、①車が運転できないと生活できない、②場所によっては病院、学校へのアクセスが悪い、③近隣住民との人間関係の3点が、母にとって辛かったそうだ。

なかでも気になったのは「人間関係」というワード。田舎に憧れている人は「人間関係から解放されたい」と考えている。しかし、実際はかなり濃密な関係であることに気づいていない。もし、移住の目的に、対人関係からの逃避の気持ちがあるのなら、すでに黄色信号だろう。

移住の目的が明確でなければ、しない方が良いと考える。一時の気の迷いで、勘違いしているだけかもしれない。気持ちが強いのであれば、段階的に移住をするべきだと思う。仮に東京から地方へ引っ越す場合、まずは地方でも都市部に住んでみる。そこから自然豊かな土地へ移ってもいいのではないだろうか。引っ越しの費用がネックではあるが、理想の暮らしを得るためには必要なことだろう。

高知市はこのような段階的な移住に関して取り組んでいる。「二段階移住」ということで、一段階目は市内で物件を借りて、そこから県内をめぐる。二段階目で自分に合った場所へ移るというものだ。最初の移住費用やレンタカー費用なども補助してくれるということで、手厚いサポートをしてくれる。このような支援があれば、精神的にも楽になれそうだ。

暮らしの環境はとても大事だ。自分にぴったりな場所があるかもしれない。現状に不満があれば、「第二のふるさと」を探す旅に出るのも良さそうだ。

参考記事:

1日付 読売新聞朝刊(大阪13版)27面「若者に「田舎志向」」

参考文献:

こうち二段階移住(https://www.city.kochi.kochi.jp/deeps/01/010999/renkei-nidankaiiju/