適切な性教育を

夜ごとに体を触る父。その父に扶養されなければ生きていけない自分。頭がおかしくなりそうだった。

14日付の朝日新聞で、「子どもへの性暴力」という特集が組まれていました。被害者女性(29)は6歳のころから約10年にわたって家庭内で性暴力を受け続け、今も苦しみを抱えています。安心できる場所であるはずの家庭で、「魂の殺人」が続く恐怖は、はかり知れません。

母に助けを求めても、「男ってそういうものだから」とはねつけられてしまったといいます。彼女に、別な逃げ場は作れなかったのでしょうか。他の人に助けを求めることができなかった背景には、日本の性教育にも問題があるかもしれません。

皆さんは、生命がどう誕生するのか、いつどうやって知ったでしょうか。小中学校通じて、「性交」「セックス」ということばは学習指導要領にありません。避妊についても習いません。日本は、性教育後進国になりつつあるといわれています。

日本では、性的な話をすることがタブー視される傾向にありますが、海外では、幼児教育の段階から性教育を取り入れているところも珍しくありません。「もしおばさんに(あいさつの)キスをしたいと言われたらどうする?」という質問を投げかけ、実際にロールプレイングをして断り方を学んだり、「人との距離は自分で決められる」ことについて学んだりするところから始まります。どんな小さく、体が未発達な子どもも、他人に侵害されてはならない大事な部分を持っています。ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」には、9歳から12歳の間に、「どのように妊娠するのか、避けるのかを説明する」という項目があります。

先日、児童養護施設で働き、性教育に取り組む方からお話を聞き議論する機会がありました。

性的自己決定の権利は、大切な人権のうちである。性教育をすることは、自分の身体を守ることにつながる。逆に、性的な話をタブー視することは、子どもが自分の身体を守る武器を奪うことにつながる…。私自身、今まで真剣に性教育について考える機会はありませんでした。「下ネタ」には笑ってごまかして対応してきたし、正直、未だに正しい知識を知っている確信もありません。性について適切に言語化できないことは、危険なことでもあるとわかり、驚きました。

議論のなかでは、「性がタブーなのではなく、プライベートゾーンへの侵入がタブー」なのだという意見もありました。どうしてもそこを切り離さないままに考え、性的な話になったときに向き合わずに逃げてしまいがちです。しかし、その一つ一つの行動も、性被害者が口をつぐんでしまうことを助長しかねない。そのことを自覚したいものです。

 

参考記事:

14日付 朝日新聞朝刊(愛知14版)1面「お父さんが触ってくる、助けて」関連記事 2面

参考資料:

現代ビジネス 講談社小学生がコンドーム装着実習…オランダの性教育がすごい!