いつの日か声援を

筆者が通う中央大学の運動部における夏の風物詩。それは氷争奪戦です。各部のプレイヤー、マネジャーが競うように体育館にある業務用製氷機に集まります。私がマネジャーをしているフィールドホッケー部もその常連。壁の貼り紙「氷の取り合いは絆を溶かす」が物語るように、複数の団体が使うと大量の氷は一瞬でなくなります。一度空になった製氷機が再び満杯になるのは1時間以上経ってから。部活が始まるまでに氷を揃えるには、それを見越して確保しておく必要があるのです。しかし今年は、その風物詩がなくなるかもしれません。

大学が感染防止のための部活動停止を決めてから約2か月。いつの間にか夏が近づいてきています。例年ならば新チームも軌道に乗り始め、春季リーグを勝ち進んでいくはずでした。でも今年は違います。いつになれば部活は再開するのか、そうなっても今まで通りにやれるのか。そして練習の成果を発揮する試合は。そのような不安を部員全てが抱えています。実際4月に開幕する予定だった春季リーグは中止になり、「1つ上の舞台に昇格する」という目標を達成できませんでした。

「テストがなかったら、勉強する意味が分からなくなるでしょ。それと同じ」

秋で引退する先輩に「試合がどれだけ大事なのか」と問いかけました。

「試合で結果を残すために毎日汗水垂らしている。でも試合がなかったらあの練習は意味がなかったのかと思ってしまう」

大学生ばかりではありません。絶望する高校生の姿を見ると胸が締め付けられる思いです。史上初の中止が決まった高校総体、春の選抜高校野球や夏の甲子園。目標としていた大会が開かれず、目標を失ったのにモチベーションを保つのは容易なことではないでしょう。力を発揮する場を失ったプレイヤーを近くで見ているからこそ、その難しさを感じます。

私たちにできることは、見守ること。それだけでいいのです。今は前が見えなくとも、いつか彼らが涙を拭き新たな目標を見つけたとき、私は全力で声援を送りたいと思います。

 

 

参考記事:

22日付朝日新聞朝刊(東京14版)15面(スポーツ)「2020年の球児たちへ」関連記事23面

同日付日読売新聞朝刊(東京13版)17面(スポーツ)「球児たちにチャンスを」