メガソーラー 受け入れの可否

2011年、日本を襲った過去最大級の地震・東日本大震災。皆さんの記憶にも新しいと思います。交通インフラが破壊されモノを自由に運べなくなり、その影響は遠く離れた関西地方など全国に及びました。

東日本大震災による最も深刻な影響は、津波と、それによる福島第1原子力発電所の事故でした。水蒸気爆発が起こり、放射能が拡散され、間もなく9年がたとうとしている現在も除染が続いています。また、今までほとんど語られなかった原発の負の側面も垣間見え、その後の原発の新増設は足踏み状態です。

そんな中脚光を浴び始めたのが再生可能エネルギーでした。自然に発生している風や太陽光などを活用した発電方法へのシフトを求める声が大きくなりました。

その中でも、太陽光発電設備の建設を巡って、兵庫県宝塚市がもめています。大阪市内の業者が、宝塚市内の2.5ヘクタールの敷地に1万枚以上の太陽光パネルを敷き詰める計画を行っているのです。

ここで確認しておきたいのは、この計画自体に何の違法性もないことです。業者は県や市の条例に基づいて開発計画を届け出ています。問題は、計画地に隣接している市の公園「北雲雀きずきの森」の存在です。この公園では、ホタルや希少なサンショウウオの一種が生息しており、地元のまちづくり協議会やボランティアが環境保全に努めています。

周辺住民は、今回の開発により希少生物が減少したり景観が悪化することを懸念しています。また、災害が発生した際に土砂崩れが起きるのではないか、台風の突風でパネルが飛ばされるのではないか、などの恐れも指摘されています。こうした論争は何もこの宝塚市に限らず、近くの神戸市北区でも甲子園球場29個分のソーラーパネル計画が進んでおり、そこでも希少動物が生息していることから反発の声があがっています。

本来、原発に依存しすぎないように、「クリーン」な発電方法として注目を集めていた太陽光発電。住宅の屋根への設置は進んでいますが、さらに普及させるには大規模な施設が欠かせません。しかし、いざそれを実行しようとすると、かえって環境を悪化させかねないという皮肉なことになっています。また、受け入れる側の周辺住民の同意がなければ安定的な運営は難しくなります。

一方で、法律や条例に違反しているわけでもありませんから、一概に業者を責めるわけにもいきません。筆者は大学で、発電方法に関する講義を受講していたことがあります。その時先生は「再生可能エネルギーなら今の問題がすべて解決するわけではない。例えば風力発電を増やそうとすると、近くの住民は、家に差し込む太陽光が羽によりチカチカしてしまう。これは精神的に相当なダメージを与える。太陽光もそうだが、原発1基に比べて発電効率が極端に悪いから、本気で原発を代替しようとすると今より桁違いの敷地が必要になり、コストが莫大なものになる」と指摘していたのを思い出します。

周辺住民の意向を、いわば外野にいる私たちが無視するわけにはいきません。太陽光発電を全否定するつもりはありませんが、自然エネルギーが私たちをバラ色の未来へと導いてくれるわけではないのだと再認識しました。

参考記事:

12日付 読売新聞朝刊25面(地域・阪神)「太陽光施設に環境懸念」

参考資料:

2019年9月11日配信 神戸新聞NEXT「希少種宝庫にメガソーラー 神戸・北区に計画、甲子園29個分」

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201909/0012688232.shtml