その食品、捨てないで

 皆さんは「賞味期限」と「消費期限」の違いをご存知ですか? 賞味期限とは、「おいしく食べられる期間」で、一方の消費期限は「安全に食べられる期間」です。つまり、前者を過ぎてもまだ食べられるのに対し、後者は日付を過ぎたら早めに廃棄しましょうということになります。

 日本の食品ロスは年間500万~800万トンと言われています。その中でスーパーや飲食店が処分する食物は約330万トンを占め、とても深刻な問題となっています。記事によると、店頭での販売期間が賞味期限に左右される業界の習慣「3分の1ルール」が深く関係しています。

  例として製造から賞味期限まで6カ月の期間がある製品があるとします。最初の2カ月が納品期間で、次の2カ月間が販売期間です。この販売期間に完売しなければ、賞味期限までの期間が残っているとしても処分しなければなりません。この3分の1ルールにより、多くの食物が否応なく廃棄されてしまいます。

  私がよく足を運ぶスーパーでは、賞味期限が迫った商品は特売品として並べられますが、それでも手を伸ばす買い物客がいなければ、次の日には撤去されていることがよくあります。「まだ期限まで2週間以上あるのに勿体ない」とずっと疑問に思っていましたが、こんな内部ルールに基づいて処分されているのを知り、少し納得しました。

  醤油、マヨネーズ、納豆といった食品では、メーカーで商品の賞味期限を伸ばす開発が進み、一部店舗で販売期間を長くする動きもあるものの、全体には広がっていないそうです。こうした工夫の他に、私たち消費者も食品を買ったら出来る限り「すぐ食べる」ということを意識しなければならないなと強く感じます。

  世界を見渡せば、食糧が十分に行き渡っていない国は数多くあります。貴重な資源の無駄を減らすためにも、身の回りから食品ロスが姿を消していくことを期待しています。

 16日付 朝日新聞 13版 35面 「科学の扉 賞味期限を延ばせ」

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