専業主婦だって立派なスタイルです

「ギグ・エコノミー」と呼ばれる働き方をご存知でしょうか。インターネット上のプラットフォームを通じて単発の仕事を引き受けます。例えばマレーシア在住のノーダリラ・モハメドさんは日本企業から市場調査を受託し、未明から早朝にかけて自宅で業務をこなしています。日本ではあまり馴染みのない方法ですが、世界には約7,000万人の働き手が登録されているとの推計もあるようです。

人手不足が叫ばれる現代の日本。有効求人倍率はバブル期並みの水準まで上昇し、政府はとうとう外国人材の労働力受け入れを決定しました。企業もレジの無人化や配送業務の効率化などに乗り出しています。

一方の個人はどうでしょうか。少子高齢化の進行により将来的な労働力不足が見込まれるなか、仕事に就いていなかった女性や退職後の高齢者が働き始めるなど、今までの雇用スタイルが変化しつつあるようです。

筆者が特に気になるのは女性の社会進出です。深刻な労働力不足を背景に政府も企業も積極的に女性を取り込もうとしています。ターゲットは主に専業主婦でしょう。しかし、今の空気のなかに「専業主婦なんて古い。家に閉じこもってなんかいないで働こう」という方向を感じてしまうのは私だけでしょうか。

筆者の母親もほとんどを専業主婦として過ごした人です。私が学校から帰れば必ず「おかえり」と言ってくれ、夕方になれば晩御飯を作り始め、何か裁縫を頼めば学校に行っている間に片づけてくれる、典型的な専業主婦でした。

専業主婦だって立派なお仕事です。朝から晩まで一人で家事をこなし、父親は同じく朝から晩まで会社で仕事に励む。その二人は私にとって尊敬できる存在です。

そういう環境で育ったからこそ「今の潮流は家事も仕事もできる女性!」と言わんばかりの今のムードには疑問を抱かざるを得ません。本当に大事なのは、「女性も働きやすい環境を整えるけど、最終的に選ぶのは女性自身。政府も企業もその選択肢をより充実させること」だと思うのです。

 

参考記事:

21日付 読売新聞朝刊13版 6面(国際経済)「「私らしい」働き方 光と影」