時代はSNS インスタ映えするファッション経済

 世界中に約8億人。

 皆さん、これが一体何の数字だかわかりますか? 実はこれ、世界中で「インスタグラム(インスタ)」を使っている人の数なんだそうです。日本国内に限っても約二千万人のユーザーがおり、現在の日本人口を一億二千万人強と考えると六人に一人がインスタグラムを使っている計算になります。わたし自身インスタグラムは利用していないのですが、大学の友人やバイト先の先輩など、周囲を見渡すとほぼ八割がた利用しているといった印象です。

 実は先に挙げた数字を見たときに、思ったより少ないかな、とも思ったのですが、スマートフォン用アプリであるインスタグラムを使う年代を考えればわたしの周囲で利用者が多いということもうなずけますね。

 さて、インスタグラム自体は皆さんもよくご存じでしょう。ツイッターやブログなどとは異なり、文章ではなく写真や動画をメインに投稿するスマートフォン向けSNSアプリです。画像メインというだけあって、フィルターや加工機能が豊富で、「インスタ映え」という言葉も一般的になってきました。

 皆さんはこのインスタグラムに対してどのような認識をお持ちでしょうか? ただきれいな写真を上げてみんなで盛り上がるSNS?
 わたしもそう思っていました。けれど、実際の認識は違うようです。

 今日の朝日新聞に載った記事には、今年九月に開かれたファッションショー、ニューヨーク・コレクションの華やかな写真が添えられていました。驚くことにその中の一枚は、インスタグラムの画像の切り抜きです。九枚にコマ割りされた写真はどれも有名ブランドの新作衣装を身にまとい、ランウェイを闊歩するモデルの姿。これ以上ないインスタ映えですね。

 電通メディアイノベーションラボが昨年行った調査では、15~34歳の若い男女1600人のうち、SNSの投稿を見て似た商品を買うなどの消費行動をしたことがある人が約八割に昇ったそう。また、十代の女性がトレンドを探すために、グーグルなどの検索エンジンよりもインスタグラムのようなSNSを利用する人のほうが多かったという結果も出ています。文章より、写真や動画をメインにしている分情報量が多いということ、また、手元で収まるスマートフォンの利便性の影響が大きいようです。

 また、ブランド側もすでにインスタグラムの可能性に気付いています。例えばドルチェ&ガッバーナ。十月に東京で開催されたファッションショーでは、人気の投稿者「インフルエンサー」を募って自社製品の情報の拡散を狙いました。インスタグラム社のファッション・パートナーシップ統括責任者、エヴァ・チェン氏は「インスタグラムによって、業界人のものだったファッションの世界がぐっと身近になった。デザイナーも、どんなメッセージをより多くの人に届けるべきか、考えるようになったと思う」と述べています。

 人が集うところには新しいものができるとは言いますが、インターネットの利用が一般的になった現代、実際に人が集まったわけでなくともそれは変わらないようです。ただの娯楽のためではなく、そこに新たな経済効果があると見込んでインスタグラムを普及させたというのであれば、相当スマートかつフレキシブルな試みだったといえるでしょう。

 今は大学生のわたし。社会に出るころには、今では考えられない場所が経済の中心地になっているかもしれませんね。

参考記事:
16日付 朝日新聞朝刊(大阪10版) 33面 「#インスタグラムに誘われて」