道州制に「イエス」と言えないのは

22日の投開票に向け、朝から駅前で声を張り上げる候補者の声が、線路ぎわに建つマンションの部屋にまで響いてきます。

今日の新聞で各党の公約を読んでいたのですが、引っかかったのは「道州制の導入」です。希望の党と日本維新の会がそれぞれ掲げています。国の権限と財源を地方へ移し、地域を元気にするというのが両党の言い分です。

道州制をめぐる議論は多岐にわたりますが、基本的には、都道府県を廃止して全国をいくつかの区域に分割するアイデアです。2013年に国会への道州制法案の提出(日本維新の会・みんなの党)があり、14年にも道州制基本法(自公案)の提出を模索する動きがありましたが、「地域間格差が拡大する」などの反対意見も多く、実現には至っていません。

私が道州制に「イエス」と言えないのは、間違いなく市町村合併が促進されるからです。地域政治に詳しい教授は、合併によって議会や執行機関と住民との距離は遠くなり、住民自治が衰退する懸念があると講義で話していました。

平成の大合併のとき、秋田県横手市の誕生をめざす合併協議会で住民代表の委員だった母は、それぞれ思惑を持った市町村間の意見のすり合わせに頭を悩ませていました。「合併にも対等合併・吸収合併があって、より小さな自治体ではいまだに不満を持つ人も多い。ただ、人口が減っても提供するべきサービスは変わらないので、供給側の負担は大きくなる。将来を考えれば必要だった」と、当時を振り返ります。

今年に入ってから、移住を考える人びとに興味を持ち、いくつかのイベントに顔を出しました。役所の職員、移住者、住民それぞれが地域を元気にし、そのあり方を問い直し、守っていこうとしています。課題を前に頭を抱えるのではなく、活かせる個性を発見しようと奮起する町や村の取り組みも見てきています。マクロの視点での利益も理解できますが、そこで出会った人々の顔を思い浮かべると、そう簡単に道州制構想にうなずくことはできません。

参考記事:
14日付 読売新聞朝刊(東京12版)10面、11面「8党公約比較」