日常の中の高校野球

夏の全国高校野球の地方大会が始まっています。今年はどんなドラマがあるのか、またプロでも活躍できる選手がいるのかなど、見どころは盛りだくさんです。東京では昨年、本大会で大暴れした清宮選手を擁する早稲田実業が再び甲子園の土を踏むのか注目されています。

ただ、地方大会に出場することそのものにドラマがあることを忘れてはいけません。今朝の記事で、5年前、双葉翔陽と富岡、相馬農業の3つの高校から成る合同チーム「相双連合」として出場した選手たちの近況が紹介されていました。

東日本大震災、またそれに伴う原発事故によって付近の学校で部員不足が目立ちました。部員不足による連合チームの特例は、統廃合を控えた学校が対象でした。しかし、当時福島県高校野球連盟理事長だった宗像治さんの熱意によって、被災によるものでも認められるようになったそうです。宗像さんは「高校野球はかけがえのない日常生活の一つ。厳しい状況だからこそ、続けることに意味があった」と振り返ります。

今でも原発付近の多くのエリアは帰宅困難地域に設定されており、家に住むことが許可されていません。ましてや、5年前の大会は事故があってから半年もたたない時期の開催です。普段の生活すらどうなるかわからない状態で、野球を満足にやれる状態ではありませんでした。合同練習は週に1回、その都度空いたグラウンドまで2時間以上かけて通う部員もいました。それでも当時の主将は「野球がやれる以上、特別扱いされる状況ではない」と感じていたそうです。

どの選手にも様々な思いがあり、それらがぶつかりあう高校野球。この夏も、球児による熱い戦いが待っています。

 

参考記事:

3日付:朝日新聞 東京14版 朝刊 18面「やり切った満足感 今も力に」