廃棄カツ横流し  目指すべき 自給率より 完食率

最近は寒い日が続いていますね。体の芯から温まるものが食べたい筆者です。そんな時、駅前を通りかかると漂うスパイスの香り、何度誘惑に負けたことでしょう。皆さんの中にも筆者同様、ファンの方がいらっしゃるかもしれませんね。まさかこんなニュースになるとは非常にショックを受けております。ということで今回はCoCo壱番屋の廃棄カツ横流しのニュースから、我々の食生活を振り返っていきたいと思います。

「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開する壱番屋(愛知県一宮市)は、昨年9月の製造時に異物が混入した疑いで4万枚の冷凍ビーフカツを廃棄した際、そのうち3万枚超が委託を受けた産業廃棄物処理業者によって不正に横流しされていたと発表しました。壱番屋から委託を受けた処理業者「ダイコー」(同県稲沢市)が麺類製造業「みのりフーズ」(岐阜県羽島市)を含む複数の業者に横流しを行い、県内22カ所、うち名古屋市内では17カ所で流通し、少なくとも8000枚が販売されたとみられています。今朝の朝刊では、ダイコーが過去にも同様の転売を3年間で3回ほど行っていいた事実も掲載されました。壱番屋とダイコーは2001年から取引があり、今回の4万枚以外にも横流しの可能性があり、壱番屋は調査に乗り出しています。また、「全て堆肥処分にした」などと虚偽の管理票を作成していた疑いや、みのりフーズに対してCoCo壱番屋と書かれた箱とは別の箱を使うよう指示してたことも明らかになり、食の安全に対する悪質性を感じずにはいられません。

当たり前の大前提として、人の口に入るものである以上、それを扱う企業には設備や技術だけでなく、他の業界以上に高い倫理観が必要なことは言うまでもないでしょう。加熱すれば食べられるものであったとしても、あくまで廃棄物、「ゴミ」として預かったものを流通させることは言語道断です。消費者の口に入ってからでは遅いと言わざるを得ませんし、第一、この事件で一番の被害者はCoCo壱番屋です。問題が発生した時に消費者は「ダイコー」ではなく、「ココイチ」を想像します。消費者目線で考えた時、自社以上に被害を受ける取引先の立場に立っていれば、このような行為はできないはずです。

産地や原材料の偽装や賞味期限の付け替えなど、食品に関する不祥事は皆さんも報道等でいくつかご存じではないでしょうか。大手チェーン店やホテルなどでも発覚したこともあります。前述したようにやってはいけないことであり、企業を擁護するつもりはありませんが、今回のような大量の廃棄物が出るような社会自体に問題の原因があるのではないでしょうか。今回は異物混入の疑いによる廃棄処分であり、やむを得ない部分もありますが、もしこれが賞味期限切れや販売期間終了による廃棄であったらもったいないと感じませんか。正しい保存がなされていれば、価格を下げるなどの形で販売する方法はないものか、コンビニの裏に積まれた袋いっぱい商品を見ていつも考えてしまいます。そしてまだ食べられるものを廃棄することで、廃棄物でありながら食品として今回のような横流しを行う業者や食品偽装の商品と利用されます。もったいないという価値観やゴミ処理などの環境問題だけでなく、このような大量に食品が廃棄されてしまう社会は不正な商行為も誘発してしまうことでしょう。我々の暮らしが不正の温床だと思うと筆者をぞっとしてしまいます。

このような問題の原因は我々一般消費者にもあるのではと感じています。消費期限や賞味期限を切らしては捨てるを繰り返し、食べる種類はそう多くないにも関わらず、メニューやトッピングの豊富さを求め、季節限定などの商品を次から次と求めるような生活、筆者もついついやりがちですが、その生活をまず見直すことが最も効果的ではないでしょうか。様々な選択肢が必要とされるから企業は生産を大量に行います。その結果ものが余り、余ったものを巡り、今回のような事件につながると筆者は感じずにはいられません。これまでの生活を見直し、我々が食品を無駄にする量が少なければ、横流しや偽装の必要性が激減することでしょう。責任の一部は我々にあります。悪質な企業を批判することはこれまでの自分たちの生活を批判することに跳ね返ってくるのかもしれませんね。

食品に関する報道では、食料自給率や地産地消、食育などが中心で、今日の食べ物が余ること現状は当たり前なのか触れられていないように感じます。しかし、日常生活で食べ物を無駄にしている我々がより難度の高い食料自給率を上げるなど果たしてできるのでしょうか。まずは残さないこと、無駄にしないことを徹底することから始めるべきです。自給率よりも完食率が大切だと感じています。

出されたものはきちんと食べましょう。解決策はそれが壱番です。

参考記事 15日、14日付各紙朝刊関連面