労働トラブル、あなたは相談できますか?

「アルバイトに不足金を支払わせること、有給をとらせないこと、タイムカードを押した後に働かせることは全て労働基準法違反です。皆さんが大学生になりこのような違反を前にしたら、労働基準監督署に相談しましょう」

大学入学を間近に控えた高校3年生のとき、先生方が開いてくれた「労働基準法講習会」で学んだ。当時の筆者はそのような職場が本当にあるのかと疑うと同時に、もし自分が違反を見つけたら必ず相談しようと意気込んでもいた。

大学生になり初めてのアルバイト。たしかにブラックバイトは存在し、筆者は相談できなかった。

飲食店で、勤務中に5千円の入金不足が生じた。店長からは、シフトに入っていた4人で頭割りし、1人1250円を払ってほしいと告げられた。先輩たちも自分がミスをしたときは払ってきた、勉強代だと思えばもうミスはしなくなるからという言葉は衝撃だった。労働基準法を思い出した。しかし断ったら、労働基準監督署に相談したら、働き続けられないのでは。平日、休日問わず部活がある筆者にとって、週1シフトOKという条件は捨て難かった。払わなくていいはずなのに、払わなくては続けられない。葛藤はあったが、店長を前に「払います」以外の言葉は言えなかった。誰の失敗か特定できないとはいえ、自分のミスが原因かもしれないという罪悪感も作用した。

2015年大学生、院生、短大生、専門学生千人を対象にした厚生労働省の「アルバイトに関する意識等調査」によると、アルバイト1961件のうち48.2%で労働条件上のトラブルがあったと答えている。半数近くの学生が「休憩時間がない」「残業分の賃金が支払われなかった」などを経験しているのだ。

労働者と雇用主間のトラブルは学生に限らない。経団連の企業調査によると、職場でのパワハラに関する相談件数が5年前より増えた企業は、44.0%に上った。昨年6月からパワハラ・セクハラ対策が事業主に義務化されたことで、被害者が勤め先に相談しやすくなったとされる。

アルバイトの話に戻る。結局お金は払ったものの、それから程なくして辞めることにした。他の3人は自分たちが悪いからと納得した様子で、時給以上のお金を払ったそうだ。辞めてから初めて友人に事の顛末を打ち明けた。「それは絶対におかしい」。その言葉を聞きやはりそうだったのかと改めて気付かされた。もっと早く相談しておけばよかった。

相談するのは容易ではない。勇気がいる。「周りが我慢しているから、自分も」。そんな気持ちで口を閉ざしてしまうこともあるだろう。しかし誰かに話すことは、自身の労働環境が健全で安全なものか確かめることにつながる。傷つき、葛藤する心に寄り添う場所が1つでも多くあることは、社会にとって極めて重要だ。

 

参考記事:

8日付読売新聞朝刊(東京13版s)31面「パワハラ相談「増えた」44%」

参考:

厚生労働省「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査結果について

厚生労働省「労働条件相談ほっとライン