居場所づくりの現場

「今や、日本の子どもの6人に1人は(相対的)貧困状態である」。新聞やテレビでよく言われるようになりました。現代の貧困の特徴は、単に「お金がない」というのではありません。人とのつながりがないのです。貧困状態にある子どもやその家族が社会からはじき出されています。孤立しているからこそ、見えにくい。貧困率に実感がわかないという人も当然だと思います。それではどのように問題を捉えていけばいいのでしょうか。

厚生労働省は26日、来年度予算の概算要求を示しました。要求額は30兆円を超えました。これは4年連続です。ちなみに安倍内閣は格差是正に対し、全体で366億円を計上しています。子どもの貧困・ひとり親家庭への対策などを強化するといいます。厚生省は具体的な政策もあげています。「子どもの居場所作り」の促進です。ひとり親家庭の支援の一つにあたります。

私もこのような居場所づくりのボランティアをしています。やはり貧困支援の現場において孤立が問題になっています。子どもについては親、友人、社会からの孤立。親が子どもの進学に前向きではなく、教育に無関心なことも多い。卒業旅行では友人とお揃いの格好ができない。専門学校に進学したいけれど、どんな支援制度があるのかわからない…。経済的な理由がもとになって孤立してしまうことが多いのです。そこで私たちは学習以外のサポートもしています。外とのつながりを築く支援です。ボランティアと一緒にオープンキャンパスに出かけたこともありました。授業参観を見に行った人もいます。

学習や食事をする居場所づくり進める自治体を支援し、親が仕事中でも規律を持って生活できるようにする。

そうした記事のような側面もあるでしょう。でも現場をみている私は確信します。こうした活動で一番重視されていることはやはり「人のつながり」です。居場所に取り組むNPOは、孤立化を防ぐことで貧困問題を最小限に抑えようとしています。当事者が声をあげることも多くなった今日この頃。それでもメディアにはまだまだ現場の状況をうまく伝えてもらっていないと痛感します。自分たちの活動への思いを届けきっていないのです。はがゆくてなりません。世間の人はどういった情報を知りたいのか、だれかに教えて欲しいものです。もちろん支援する側も社会に広めていく努力を怠らないようにします。

なかなか見えない問題だからこそ、生の声は欠かせません。どうして支援策が必要なのか。その活動に取り組む人はどんなことに重視しているか。居場所がどういったものか。貧困問題について論ずるならば、メディアには自分の目で確かめ、そのうえでしっかりと発信してもらいたいと考えます。

 

参考記事:26日付 読売新聞 夕刊1面(東京4版)「子ども貧困対策366億円」

27日付 日本経済新聞 朝刊5面(東京14版)「厚労省、概算要求30.6兆円」