ネット時代に求められる新聞像

ネット時代に求められる新聞像

インターネットの時代に登場した「あらたにす」。ユーザーが3紙のニュース・社説の読みくらべをする中で、「新聞そのものを読んでみたい」と感じる人が増えて行って欲しいものです。社会のすみずみまでネットが浸透していく中、新聞の役割や報道・社説の在り方にも変化が現れてくるのか、論説トップ3人に意見を聞きました。

白石 ネット時代の新聞の役割、その中で社説や主張のあり方について伺いたいと思います。
今回のこの鼎談は日経、朝日、読売の3紙でニュースサイトを立ち上げるのを機に、その記念イベントとして開催されているわけですが、その狙いの一つにライバル紙3紙が協働することによって新聞の読み比べができる。であればネットではなくて本紙の方を読んでみようと、いままで新聞を読まなかった方たちの掘り起こしにつながると私は思っています。ディスプレーで見るのと紙面で読んだ場合は頭への入り方が違うのでそうしたところをぜひ若い人たち、私が教えている新聞を読まなくなっている学生たちにも体験してほしいと思いますが、ネット時代になると新聞の役割や新聞離れが起きるといったことがよく言われますが、果たしてそれは本当なのか、役割の面や新聞の中での社説や主張に何か違いが出てくるのか。ネット時代の新聞、そして社説や主張のあり方についてご意見を伺いたい。

岡部(日経) 去年、新聞協会主催で「ネット時代の新聞」というテーマのシンポジウムがありました。新聞界からは私だけが出たのですが、そこではまずグーグルのトップが「ネット時代になると、スクープはいらない」と言いました。さらに小説家の平野啓一郎さんは「新聞に社説や解説もいらない」(笑い)。じゃあ新聞はスクープも社説も解説もなくて、いったいどうなるんだと私一人で反論したのですが(笑い)、ネット時代の新聞の役割は、まさにこのスクープ、論説、解説だと思う。た しかに明日わかることを今日、報道するのは意味がないのではないか、という見方もあるのですが、これも重要だし、さらに深堀りしたような、歴史の中で埋没したような事実を掘り出してくるスクープ。例えば富田メモの発掘のようなことも非常に重要だと思います。それから混迷の時代に指針を示す社説や解説の役割も、いっそう高まってくるのではないかと思います。
スクープと解説は、全然、別物だと見ている人が多いのですが、私は一体だと思う。というのはスクープを追わなくなると、解説で深堀りしたものを書けないし、主張できなくなるからです。だからこれは一体で考えなければいけない。これこそ新聞の大きな使命であり、特徴だと思います。メディアという形態からいくと、新聞とネットは、まさにこのネット共同事業ができるように共存時代に入っているし、将来は媒体としては融合の形態もあります。例えばそのひとつの形態としては電子新聞があげられるかと思う。しかし紙でつくられて、携帯性と 一覧性が高い新聞は、どんな時代にも生き残ります。ただそのためには、いろいろ切磋琢磨していかなければならないことが多いのではないかと思います。

朝倉(読売) 社説ということに限っても、ネット現象が進展するにつれて読者からの反応が速く、かつ多くなってきました。地球の裏側からでも瞬時ですからね。そういう意味では社説は世論の動向にフラフラついていかない方がいい性格のものではあるけれども、しかしいろいろな声を参考に踏まえてという意味では、たぶんそういう形でつくっていかなければならないのだと思います。ただネットやブログという場合、その多くは「個論」というか、個人の発信ということだから、新聞が組織としてつくる社説への信頼は、ちょっと違うだろうと思います。世論調査でも新聞自体に対する信頼度は、テレビその他のメディアに比べても圧倒的に高い。そういう特質・本質は、これからも残るから、新聞の役割は続くと思うし、まして「新聞はいらない」ということはない。外国の新聞界のいろいろな動きが日本にもたらされるけれども、これには非常に大きな違いがあります。日本の高い新聞普及率は、世界に類例のない個別配達制度で維持されているから、したがって新聞は向こう何十年も健在であり続けると思います。

若宮(朝日) 私も希望的観測を込めて(笑い)お二人がおっしゃったことに同感で、インターネット時代の中でも新聞でますます頑張りたいと思っています。
 社説に関していうと、朝日新聞は2004年4月1日に紙面改革をして社説の位置を変更したのを機会に、「社説」をテーマにして「比べて読めば面白い」という社説を掲げたことがありました。多くの人は、社説は各社とも同じようなものだと思っているかもしれないけれども、実はこれだけ違うから、読み比べてみると面白いですよ、という趣旨です。そのときは、イラク戦争開始からちょうど1年たったときだったから、冒頭に読売新聞がイラク戦争開戦に賛成したときの社説を引用させていただいて、こんなに違うのですよ、ということを朝日の読者にもわかってもらえるようにしたわけです。今度の試みは、たまたま3紙に限られてはいるけれども、日常的に読み比べがしやすくなったわけですね。

朝倉(読売) 毎日、行われるということになるでしょうね。

若宮(朝日) そう、そう。毎日、すぐに比べられることになるので、手を抜けないどころか、相手を意識してますます切磋琢磨せざるを得ないな、と思います。
 今の話の続きで言えば、今年3月でイラク戦争も5年になる。先ほど読売さんは、消費税に賛成をしたという輝かしい実績を、大変誇らしげにおっしゃった。私は、それはそれで非常に多とすべきものだと思うけれども、じゃあイラク戦争5年を迎えるときに、イラク戦争開戦を強く支持した社論をどう総括されるのか、今から楽しみにしています(笑い)。

朝倉(読売) 楽しみにして下さい(笑い)。

白石 お三方のお話を伺って、新聞の果たす役割を再認識させていただきました。例えば正しい報道と健全な批判的精神を持ち続けること、歴史の掘り起こしと文化の継承――など、いろいろな役割をもっていることを再認識させていただいた。と同時にインターネット事業を通じて、3紙読み比べその他ができるので、新聞の役割が新しいステージを迎えたのではないか、という感想も持ちました。
 本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。

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