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2009年06月13日

<時の人> 経歴はこちら>>

NPO法人「おやじ日本」設立記念大会(1/10)

 今週の<時の人>は、子育てに悩み迷いつつ、あるべき父親像を追い求める全国の「おやじ」たちである。全国に4000以上もある「おやじの会」の全国連絡組織「おやじ日本」がこのほど、特定非営利活動法人になったのを記念して、6月7日、東京・渋谷で行われた大会「世界のおやじ、日本のおやじ。」の講演・パネルディスカッションの模様をお伝えする。(あらたにす編集部)

【作家・鈴木光司氏の基調講演】

◆娘をあやしながら書いた『リング』
 20年前に書いた小説、『リング』がハリウッドで映画化されヒットしたので、欧米でしゃべる機会が多くなりました。そこでよく聞かれるのが「いつ、小説を書くのですか」という質問です。執筆の時間帯ですね。
 質問者は、『リング』がホラー小説ですので、「草木も眠る丑三つ時」に恐怖に震えながら書くとイメージしたようですが、実は1、2歳だった長女をおんぶしてあやしながら真っ昼間に書いていたんです(笑)。そう答えると、昼間の執筆ということの他にもう一つ驚くんです。「日本の父親は子育てにあまりかかわらないのでは…?」と。
 僕の場合、子育てにかかわったのは偶然です。作家志望でしたので大学を卒業しても就職しませんでした。卒業の翌年に、小学校5年生の時の初恋の人と結婚しました。妻は高校の先生で、僕は塾講師や家庭教師をしながら作家修業中のいわゆるフリーター。2年目に長女が生まれましたので、いやいやながら「俺がやるしかない」と始めたのが、僕の子育てです。

◆子育てで、小説がレベルアップ
 子育ては本当に大変で、外で働く方が楽だと思いました。でも、思ってもみなかったいいこともあったのです。それは小説がレベルアップしたことです。最初、子育ては小説家になる夢をじゃまするものと思ってました。でも、これまで見えなかったことがいっぱい見えてきて小説を書くのに役立ちました。やがて二女が生まれ、2人の娘の世話をしながらプロの作家生活が始まったのです。
 当時の一日はこんな感じです。朝7時に妻が学校に出かけ、9時に娘たちを保育園に送って行きます。保育園は5時30分まで。この間が執筆時間です。午前中は読書や原稿チェック、昼食後はエッセーなどを書き、3時から長編小説に取り掛かります。5時30分にはパソコンを閉じて保育園に向かいます。保育園では、娘たちが飛びついてくるのでハッピーな気分になりました。
 最初は売れない作家だったので、親子ともども、ほとんど年中、短パンとTシャツというみすぼらしい格好でした。それも浜松の母親が送ってくれた売れ残りの10枚300円のTシャツを娘たちに着せていました。保育園の帰りに娘たちと寄った八百屋で、店のおばさんが「生きていればいいこともあるから」とニンジンやネギをおまけしてくれたこともあります。妻に逃げられ、男手一つで子育てしているように見えたのでしょうね。帰宅後は、衣類や布おむつの洗濯、食事の用意、そしてお風呂と大忙しです。そして、7時半か8時ごろに妻が帰ってきます。この生活を10年間続け、その間にデビューしてベストセラーを出すこともできました。

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