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2009年07月27日

吉井 妙子 スポーツジャーナリスト 経歴はこちら>>

松坂大輔「米国のタブー」への挑戦(3/4)


 「郷に入れば郷に従え」ではないが、松坂も、メジャー流調整法で何とか肩を作れないかと自分なりに工夫しながら、トライもした。だがやればやるほど皮肉にも、身体の根本的な差異が如実になる。白人や東洋人、黒人では筋肉や骨格が異なり、同じトレーニングメニューをこなしても、同い年の投手であるベケットやパペルポンの白人系とはトレーニング効果が違ってきたのだ。

 松坂は何度も自分の身体に合ったトレーニングをやらせて欲しいとチームに願い出たが、そのたびに撥ねつけられる。感情を訴えるだけでは無理と判断し、先ごろ、人種の身体的な差異を口にしたところ、首脳陣は目を白黒させてしまったという。ある首脳陣は、声を裏返しながらこう否定してきたらしい。
 「そんなことを認めてしまったら、僕は人種主義者としてマスコミの激しいバッシングに遭ってしまう」

○最先端のトレーニング科学の国だからこそのタブー

 10年ほど前、日本のスポーツ界に、アメリカ式トレーニングの先進性が謳われ、こぞって導入されたことがあった。しかし、身体を壊す選手が続出し、日本人にはやはり日本人に合ったトレーニングがあるという結論に達した。
 筋肉や骨格の差異によって練習内容が違うという考え方は、世界共通のコンセンサスだと思い込んでいたが、トレーニング科学の最先端を行く米国では、どうやら根本的な発想が違っていたのである。米国には「奴隷制度」の暗い過去があり、人種問題に触れることはアメリカ社会のタブーでもあったのだ。

 この話を松坂から聞いた私は、まさか人種問題がスポーツ界の練習方法にも影響を及ぼしているとはにわかに信じられず、米国の大学で運動生理学の博士号を取り、今も米国の大学で教鞭を取っている友人に、人種によって運動機能が違うという学術論文が発表されていないかどうか調べて欲しいと頼んでみた。

 数日後にこんな回答が返ってきた。
 「やっぱりない。それは寝た子を起こすことにも繋がるので、敢えてそういうテーマを研究する学者はいない」

  →次ページに続く(松坂の挑戦が始まった)

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