2009年06月12日
| 吉井 妙子 | スポーツジャーナリスト | 経歴はこちら>> |
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貧乏生活を綴ったタレントの自叙伝がバカ売れしている。漫才コンビ・麒麟の田村祐の『ホームレス中学生』は発売2ヶ月で140万部に達し、先ごろ発売された上原美優の『10人兄弟貧乏アイドル☆私、いけない少女だったんでしょうか?』も好調な売れ行きだ。テレビで見る華やかさと、その裏にある貧乏生活のギャップが、若者達にはウケているらしい。
しかし、貧乏物語ならオリンピック選手たちも負けてはいない。比率からすれば、タレントより貧窮生活を強いられているオリンピック選手のほうが断然多い。いや、一部の有名選手を除けば、ほとんどの選手が平均的サラリーマンの生活より苦しい日々を送っているのが現状だ。
○けがのおかげで五輪に出られた
2006年のトリノ五輪スピードスケートに出場したある選手(本人の希望により名前を秘す)は、大学を卒業したもののオリンピックに出場したい夢を捨てきれず、アルバイト生活を続けながら練習に取り組んでいた。
しかし、海外遠征の費用までは工面できない。スピードスケートの選手は、一年中氷が張られている米・ソルトレイクやカナダのカルガリーで夏場に練習が出来ないと、技を磨くことが出来ないのだ。
海外に練習に行きたい。でもお金がない。トリノ五輪まで1年を切った春先、オートバイを運転していて、乗用車に追突され負傷を負った。慰謝料と治療費が入る。それを全額、遠征費に充てたのだ。
トリノ五輪後、この選手は苦笑いしながら私に言った。
「もし、あのときに交通事故に遭わなかったら、オリンピックには出場できませんでした。もちろん怪我の治療をしなければならなかったけど、怪我の治療よりオリンピックの方を優先させたかった。痛みは我慢できますから」
加害者の保険から支払われる医療費を誤魔化したと受け取られはしないか、そう思ったのか、選手はこのことを公に出来ないと笑いながら語っていたが、聞いている私の方はとても笑えなかった。
○あの清水宏保も迷っていた
長野で金、銀、ソルトレイク五輪で銀メダルを獲得した清水宏保選手にも同じような経験がある。
大学時代、ワールドカップなど海外参戦の費用の半分は自己負担だった。高校時代に父をガンで亡くしているため、遠征費用は母が土木作業をしながら捻出した。
そんな母の苦労を知っている清水選手は、海外の試合に出場したい気持ちにグッと耐え、海外遠征を辞退する。母には「大学の試験があるから(海外へは行かない)」と告げた。母は息子の気持ちを察し、遠征費を工面してやれない自分の不甲斐なさに涙したという。
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