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2010年09月01日

吉井 妙子 スポーツジャーナリスト 経歴はこちら>>

北島康介:マイナスからの再挑戦(1/4)

 猛暑続きで頭の中がとろけてしまいそうだった8月下旬、思考能力が限りなくゼロに近づきつつあった私に、喝を入れてくれるような嬉しいニュースがあった。

 米国で開催された水泳のパンパシフィック選手権で、北島康介選手が平泳ぎの100mと200mでいずれも今シーズン世界最高記録を出し、二冠を達成したのだ。

 もちろん、日経、読売、朝日ともこのニュースを大きく伝えたが、快挙の意味をもっと掘り下げ、より大きな紙面を展開しても良かったのではないか。

○実績の延長線でなく

 北島選手は言うに及ばす、アテネ五輪、北京五輪と2種目で金メダルを獲得している。アテネの200mではオリンピック新記録、北京での100mでは世界新記録のおまけつきだ。

 そんな突出した選手が、2年間のブランクがあるとはいえ、パンパシフィックで2冠を制したところで、「あの北島なら勝って当然」という思いが、紙面の扱いに影響したことは十分に考えられる。世間の思いも3紙とそれほど変わらないように思う。現に、私の周辺でもそれほどの驚きとは捉えられていなかった。

 しかし、北島選手の今回の快挙は、これまでの北島選手の実績の上に立ったものではない。それどころか、ゼロというよりマイナスの出発点から辿り着いたものだった。

 北京五輪で「なんも言えねえ・・・」と涙を流し、多くの日本人の涙腺を揺るがした直後、一時帰国した北島選手に話を聞いたことがある。まだ大会期間中で日本は北京五輪一色に染まっていたが、感動の発信元は意外に冷静だった。

 「多くの人に『次はロンドン五輪ですね』とか、『ロンドンではどんな泳ぎを見せてくれますか』と当たり前のように次の五輪のことを聞かれた。でも、次も目指すなんて言えないし、水泳をやっているかどうかも分からない。期待していただくのは嬉しいですけど、そんな質問が一番困る」

  →次ページに続く(アテネ五輪のあと…)

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