2010年03月26日
| 桐村 英一郎 | 神戸大学客員教授、元朝日新聞論説副主幹 | 経歴はこちら>> |
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最後のコラムだから明るい話にしたかったが、つい悲観的な見出しになってしまった。財政危機が喧伝される一方で、政治も人びとも「今が、自分たちが何より大事」「明日は二の次、三の次」という姿勢だからだ。
3月7日の朝日新聞1面は目をひいた。左肩に「20XX年 財政破綻の悪夢」と白抜きの横見出し、それに「日本暴落 恐慌の日」という縦見出し。2面には大きなスペースをとって、先進国の中でダントツに悪いこの国の財政事情、その生活への影響や対応策が書かれている。
ショック療法というのだろうか。数日後に「一気にこのレベルに来たのかと、記事にびっくりした。事態の解決には国民が応分の負担増に応じ、財政赤字の縮小に立ち向かう必要があることは明白だ」という投書が載っているから、それなりの効果はあったようだ。
国と地方の債務残高が1000兆円に迫り、国内総生産(GDP)の2倍になんなんとしている。「大台」を超えたら危ないといわれても、桁が大き過ぎてピンとこない。
○「今が大事、明日は二の次…」が招く“日本沈没”
24日に成立した新年度予算は、税収より国の借金(国債発行)がはるかに多い異常な形だ。こちらは「莫大な借金を抱える家庭が、月37万円の収入に対して92万円使うようなものですよ」と言えば、ちょっと現実味が出てくる。それでも大方は「国の話でしょ。そんなことより不況を何とかして。子ども手当はほしい。医療費の負担増はいや」といったところではないか。
財政危機をいたずらにあおる気はない。世界を見渡せば、米国、欧州、中国どこも国の懐は苦しい。大赤字なのに「円高」なのは、為替相場ひとつとっても今の世界は「どちらの状態がより悪いか」で判断されているからだろう。「今まで何とかなってきたじゃないか。しばらく大丈夫だよ」と言われれば、そうかもしれない。巨大地震の到来に似て、「日本沈没なんて考えたくない」といった気分もあろう。
でも地震と財政は異なる。前者は避けようがないが、後者は覚悟と政策次第によっては「軟着陸」が可能なのだ。逆に「現在の利益第一」「欲張りと国のすねかじり」「票欲しさ」「本音を語る勇気のなさ」を重ねるほど軟着陸(ソフトランディング)が難しくなり、よくて衰退、悪くすれば硬着陸(ハードランディング)や激突(クラッシュランディング)という事態を招く。
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