2009年04月23日
| 鷲田 清一 | 大阪大学総長、哲学者 | 経歴はこちら>> |
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「力」といえば、多くのひとは、物事をぐいぐい推し進めることのできる力、外からの強い力にしっかりと抗うことのできる力を、おそらくは思い浮かべるであろう。
けれどもひとびとのあいだでしかと「生きる」ために凡人に必要なのは、たぶんそういう力ではない。他人の境遇に思いをはせることができる、他人の思いにきちんと耳を傾け、受けとめる力、すぐに答えが出なくても問いを手放さずにしつこく問いつづけられる力、自分の意見が通らずとも辛抱する力、無理難題を突きつけられてもあきらめず、へこたれもせずに解決を模索しつづけられる力、対立する意見のなかでそれらをとりまとめることのできる力、それらを身につけることがよりいっそう大切であろう。
○現実に右往左往することが知性はぐくむ
さまざまな意見や思いが錯綜するなかで、他者のそれを受けとめたり調整したりする力、それは学力テストでは測れない。社会的な現実においてはきちんとした一つの正解はない。そして、このように相対立する意見のなかで右往左往することそのことが、じつはひとの知性の、したたかともいうべき“ため”や奥行きを育んでゆく……。
はじめは老眼のせいにしたのだが、こういう視点をもたない「孤立した」学力テストには関心がないというのが、たとえ工夫がこらされたにしてもその問題内容にあれこれ注文をつける気がしなかったほんとうの理由である。
→あす(24日)の新聞案内人は、東京大学名誉教授の安井至さんです。