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2009年04月03日

鷲田 清一 大阪大学総長、哲学者 経歴はこちら>>

「受け身」という言葉に値しない受け身(1/3)

 麻生首相になってから、テレビと新聞の報道で、なんの意味があるのかといぶかしく思いながらもつい見てしまうコーナーができた、というか、できてしまった。

 日本だけに見られる習慣なのかどうか、よく知らないけれども、テレビだとあの携帯録音機をぎっしり置いた小さなテーブルの前で、首相が記者たちの質問に答えるコーナーだ。
 どんな失言が出てくるのだろうと、画面の前で待っている自分がいる。

 新聞だと、めくって数ページ目に「首相動静」「麻生首相の一日」「首相官邸」「首相日々」といった欄がある。分単位で首相の行動を記録している。
 一日もその最後のところ、昨夜はだれとどの料理店に行ったのか、そこをかならず読むようになった自分がいる。秘書官と食事、となっているけど嘘でしょ、と憶測する自分がいる。
 自分がこのところどんどん下衆になってゆくようで、なさけない。

○“鵜呑み”“言葉尻”の記事に意味があるか

 当然といえば当然だが、どのチャンネルもどの新聞も内容はみごとに同じである。理由は至極かんたん。相手の言葉、向こうの発表内容を鵜呑みにするばかりだからだ。
 会見といっても、強烈な皮肉や機知をまぶしてひとを唸らせるような質問は耳にしたことがない。日録においてはただ受けとるだけなのではないか、とおもってしまう。

 「ぶら下がり」と言うのだろうか、移動する政府要人につきまとい発言を得ようという取材も、じつのところよく分からない。なぜ一言なのか。そして、なぜ同じその一言をくりかえし画面で流すのか。
 裏でじっくり取材し、資料を検討したたうえで、政府関係者の考えを訊(き)くのなら、小走りしながらではなく、エレベータに乗るその寸前でもなく、時間をとって問答したらいいのに、とおもう。
 言葉尻を掴むのになんの意味があるのか、とも。

  →次ページに続く(電話取材は受けない)

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