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2010年02月09日

栗田 亘 コラムニスト、元朝日新聞「天声人語」執筆者 経歴はこちら>>

トラスト・ミーとビリーブ・ミー(1/4)

 近所になかなか美味しい中国料理店があった。値段もまずまず合理的、店内はかなりの広さで、十分くつろげた。

 繁盛して、東京都内の繁華街2カ所に支店を出した。とたんに、本店の味ががくんと落ちた。2回くらい試して、我が家では行くのをやめた。時折、通りかかって窓越しに見ると、客の姿が急速にまばらになっていた。

 先日、入ってみた。あれから3年近くになるが、何やら賑わっている様子なのだ。
 味が完全に戻っていた。むしろ、以前より上等になった。メニューも多彩で、値段は元の水準である。これなら、と続けて出かけた。聞くと、支店を2つとも閉じたのだという。

 雑誌などで紹介されたレストラン、商売の規模を広げた料理店のたぐいはてきめんに味が落ちる、といった話をよく耳にする。この店も例に漏れなかったようだ。

 それと、巨大なトヨタを比較するのは申し訳ないが、今度の騒動で私がまず思い浮かべたのは、大きくなって失敗したわが中国料理店だった。トヨタがあたふたした経過は、失礼ながら「大男総身に知恵が回りかね」そのものではないか。

 じっくりと販売力、技術力を養ったトヨタは、自動車産業の元祖、アメリカのビッグブランドを抜いて世界一の座を得た。そこへ抗議の嵐である。不具合の個所がよりにもよってアクセルとブレーキとは、できの悪い冗談以下だ。

 不具合もさることながら、対応の遅れは目を覆うばかりだった。たとえて言えば、アクセルが不調で車が不安定なのに、ブレーキも利かない状態。ところが、豊田章夫社長が初めて記者会見し、陳謝したのは5日の夜遅くになってからだ。

  →次ページに続く(「傲岸」に映らなければよいが…)

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