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2010年08月30日

栗田 亘 コラムニスト、元朝日新聞「天声人語」執筆者 経歴はこちら>>

「報道・解説・評論」は機能しているか(1/4)

 行きつけの縄のれんで「サンマが高値だってね」と嘆いてみせた。海水温が高く不漁で、1匹1000円以上の値がついた、といった記事の受け売りだ。
 するとオヤジが言った。「ナニ、そのうち下がりますよ。大体ね、8月の暑い盛りからサンマ、サンマと一大事みたいに騒ぐのがおかしいんです。漢字で秋刀魚と書くように、サンマは本来秋のものなんだ。秋になれば脂がのってずっと旨くなるし、値段もだんだん下がるに決まってらあ。どうもね、この、物知らずのマスコミがいけないんだね。初物、初物と煽るばっかりで、季節感も何もメチャクチャにしちまいやがる」。攻撃がマスコミに向くと、口調が伝法になった。

 値が下がるかどうか保証の限りではないが、オヤジの言い分はわかる。ただし、新聞・テレビがとかく上滑りになるのは、持って生まれた業のようなものだ。1000円の値がついたとなれば、何はともあれ文字にし絵(写真)にする。騒がないではいられない。騒がなければ他社、他局に後れをとる。そもそもニュースとは何か。とりあえず話題になるのであれば、それは立派なニュースなのである。
 とりあえず話題になる――世論調査の結果もその一つだろう。毎週のようにどこかの新聞・テレビが「当社の世論調査によると」と内閣支持率を報じる。鳩山政権が千鳥足になり、受け継いだ菅政権も飛翔できない。そこへ、前首相と一蓮托生、役職を退いた小沢一郎氏が民主党代表選に出ると宣言した。マスコミたるもの、これを騒がなくて何を騒ぐか。
 といって、床屋政談ではあるまいし、空気とか世間話だけを根拠に騒ぐわけにもいかない。その点、世論調査の結果は数字で表される。空気や世間話が計量化されて出てくる。なにより、数字とはもっともらしい存在だ。水戸のご老公の印籠みたいなものである。内閣支持率が下がりました、と総理大臣にぶら下がり取材で突きつければ、相手も一言せざるを得ない。「総理・内閣の政策のここがおかしい」と論を立てて追及するよりは、手っ取り早く記事にできる。

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