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2008年09月30日

歌田 明弘 コラムニスト 経歴はこちら>>

大臣を「国民目線」にする方法

 政権の変わり目などに新聞がことのほか熱心に報道するのは大臣人事の予測だ。政治欄などでかなり早くから下馬評をしている。今回も総裁選中から始まっていたが、これらの記事を見るたびに、いったい誰が熱心に読むのだろうか、と思う。

 あまりにドロドロしていたりする場合には、たしかにドラマとしてはおもしろい場合もあるし、当の政治家周辺や何らかの利権が期待できる人々、とりわけトップとして仕えなければならない官僚たちには大問題だろうが、それ以外の国民には何で大騒ぎしているのかよくわからない。すでに大臣に決まった人物がどんな仕事をしそうかは国民全体にも大なり小なりかかわりがあるにしても、よく知らない政治家が大臣になろうがなれなかろうが、そんなことはどちらでもいいことだろう。

○前政権の閣僚の「成績評価」しては?

 そうしたことに割く紙面やエネルギーを少し減らして、代わりに、辞めていく各大臣の「成績評価」を詳細にやって、各紙が発表したらどうか。分析だけでなく、わかりやすく星いくつとか何点などと採点もする。

 それぞれの新聞は他紙の結果は発表しないだろうから、そこはこの「あらたにす」の出番だ。各紙の結果をわかりやすく一覧表示することはもちろんのこと、各紙が付けた「点」をたして総合評価をする。さらに各省庁の担当分野に精通している専門家に各新聞の成績評価の評価をしてもらう。

 「この新聞はなかなか鋭い」「この新聞は、この大臣に甘い評価をしている」などと判定する。成績評価が盛り上がるばかりでなく、各紙の「成績評価」のグレードも上がるだろう。評価される大臣たちのほうも、反論したければ、各紙や「あらたにす」、あるいは自分のサイトに発表して「あらたにす」がリンクを張ればいい。

 大臣になることが目標で、なってしまえばあとは官僚の言うなり、などということはできず、大臣になったあと、きちんと仕事をすることが重要だと身にしみるはずだ。利権団体のために仕事をしたのか、それとも国民目線で仕事をしたのかも問われることになる。

 大臣たちは、官僚たちのようにその役所でずっと仕事をし、辞めて以後も仕事の面倒を見てもらうなど生殺与奪の権限を役所に握られているわけではない。省庁にゴマをする必要が本来はないはずだ。にもかかわらず、ほぼそろいもそろって省庁のまわし者になるというのは、官僚に太刀打ちできる情報も知識もないことが大きいのだろうが、国民のほうを向いて仕事をする強い動機付けがないことも、そういう結果をもたらしているのではないか。

○「新しいこと」追うだけでは新聞の持ち味出ない

 だとしたら、これからなる大臣の人事の下馬評にエネルギーを注ぐより、辞めていく大臣の成績評価をしたほうがはるかに意味があるように思う。

 大臣人事に限らず、「新しいこと」を追いかけるのはメディアの習性だが、実際のところ、新しいことを追いかけるより、これまでの経緯をふり返って精査するほうがはるかに意味があることは多いのではないか。

 たとえば、法律の制定や施行はその最たるものだ。国民生活がどう変わるのか、国会や審議会などでのこれまでの議論を紹介しながらひとつひとつの法律について詳しく説明するといったことは、大臣人事などよりもよほど役に立つ。

 作ったはずの国会議員たちさえもよく理解していないうちに妙な法律ができあがってあとで大騒ぎになるなどということが起こるのは、法律がいかに顧みられていないかという証しである。どんな分野で仕事をしていても、よく知らないうちに法律ができているということほど恐いものはない。「新聞を読んでいないとまずい」という気にさせられるのは、官僚が主要な読者の大臣人事の推測記事などではありえず、こうした情報のほうだと思う。

 ネットもテレビもあるこの時代、「新しいこと」を追いかけるだけでは新聞の持ち味は活かせない。情報収集の厚みをもとに、起こったことをほかのメディアができないレベルで分析し提示することが必要だろうし、権力を持っている人たちにプレッシャーをかける力は、ネットよりもさしあたりまだ大きい。

   →あす(10月1日)の新聞案内人は、栗田亘さんです。

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