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2009年10月06日

森 まゆみ 作家・編集者 経歴はこちら>>

三たび「八ツ場」について書く(1/3)

 私は20年前に草津温泉に行った帰りにこのダム計画を知った。5年前にこの計画続行に問題を感じ、このところ2年続けてダムにかかわるシンポジウムの司会を務めている。すでにこの欄でも2度(「ダムはもう要らないかも」 「八ツ場ダムがなくなる可能性が出てきた」)、書いて来た。

 書いたことは繰り返したくない。前のコラムを見てほしい。
 賛成・反対は別として、「八ツ場(やんば)ダムに注目して」と私が訴えていた時に、「八ツ場って何?」「国がやると言った計画であるし、もう止められないでしょ」と言う学者や記者は多かった。一般市民でも八ツ場を知らない人の方がずっと多かった。

 前原国土交通相がマニフェスト通り「中止」と答えてから、がぜん脚光を浴びることになった。例えはよくないかもしれないが、下積み57年の、本当はもっと注目されるべきだったのにされなかった歌手が、いきなり舞台の中央に躍り出た感じである。

 新聞は「不偏不党」と言うが、社説では「中止反対」「様子眺め」「中止賛成」と3紙3様。当初、記事はもちろん読者の投稿欄に載る主張にも偏りがあった。
 とくに目立ったのは、「57年も翻弄されて来た住民がかわいそうだ」という論調である。そういう記事の中には必ずと言ってよいほど、「悔しそうな表情を見せた」「怒りをあらわにした」「戸惑い(または、いらだち)を隠せない」「語気を強めた」「憮然とした表情」といった、情緒的かつ常套句的な表現が見受けられた。そう見るのは、記者の主観なのではないか、と同じ物書きの私は思う。

 話が横道にそれるが、常套句といえば、私は「~と、森まゆみは胸を張った」と書かれたことが3度ほどある。私は普通より大きな胸をしていることにそれこそ大きな胸を痛めているので、どうしても猫背になりがちで、人前で胸を張ったことなんかない。

  →次ページに続く

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